テキスト1975
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-J,', という目標があって、「花道家のみる野生の花」という大変きままな見方であって、これはいけばなになる、という程度のものを見ているわけである。伊吹山の宵待草は、普通の河原にある「月見草」と違って、カンゾウの一種類の様に思える。午後3時頃からこの淡黄の花が咲きはじめ、山の斜面に群落の黄花が、動く務の中でいせいに咲く状景は実に見事である。私はその群落の花の中にたたずんで咲いてゆく淡黄の花の群がりをながめるのである。吉野山でタメトモユリ、ウバユリ、オニュリの野生地を見、また高野山のフタリシズカ、クマガイソウ、ヤマシャクヤク。岡山県高梁川の上流ではオモトの野生地、ミツマタの群生。東北地方八甲田山麓のミズバショウの群生池も見た。池賀県安袋川河口のミゾハギ、ヒメガマの群生地。これは八月の中旬、安羹川の水も干あがって水のない河口を中洲に渡って島全体をおおって生育しているのをみつけたが、ミゾハギ、ガマの群落も実に見事だ、3 った。琵琶湖にそそぐ川に咲いていたカキツバタの野生、コウボネの野生、湖辺の河原撫子も美しかった。珍しかったのは、淀川の草藤であった。淀の大橋の東岸の堤防を歩いたことがあった。そこで大粒のクサフジの花を見つけた。八月二十日と私のノートに記録してあるのだが、普通のクサフジではなく、栽培種の様なひと花5センチ程度の大きいもので、最近みられない美しい花であって、これが野生で咲くのかと驚いたものだった。この辺の河原には3メーターにも及ぶキリン草が群生しその群落の中へ入ると黄色い森の中へ入る様な錯覚を感じたものだったが、この淀川上流の亀岡の保津川では、ノビルの風に吹かれて細い茎が曲線を作って河原いちめんに生えているのも珍しかったし、これを採集して花展の材料に使った思い出もある。北陸海岸、淡路海岸のスイセンの野生地の話、これはテキストの記事にもとりあげた。このページの写生画Rの「サン。ハクソウ」は夏の野草で、主として水辺の泥を好んで出生する草である。京都の法勝寺町のある別荘地帯の溝の中に群生しているのを、永年みているが、また建仁寺の両足院の裏庭、洛西苔寺の庭園にも群生しているのをみかけたことがあった。夏の茶花に喜ばれる日本種の観葉植物ともいえる草である。Rの絵は「ひるがぉ。」これも野に咲く花である。夏に咲くやさしい花だが、朝夕に切りロを塩でもむ程度でそのまま挿ける。翌朝にはよく水を揚げて形もととのる。っぽみが新しい花を咲かせて美い、花器にびったりと姿をととのえしいいけばなになる。(画・専渓)ャ'ぷ@ サンパクソウR ヒルガオ11

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