テキスト1975
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し、。し「いずれあやめか、かきつばた」というように、あやめ、かきつばた、はなしょうぶの花はよく似ている。この三つをならべてみれば、その区別もよく理解出来るのだが、なんとなく混同されやすい花といえる。また「菖蒲」と書いてアヤメとも読ませるし、これとは全く別の植物にショウプ(白箆といって端午の節句にヨモギを添えて飾るショウプ)というのがあって、いよいよややこ宇治鳳凰堂平安朝の建造物鳳凰堂、その前へ花菖蒲を重ねて写真にとった。日本の花の情緒が感じられる。(平等院)とにかく、このページの写真にある美しい花の咲くのは「ハナショウブ」である。五月下旬から六月へかけて咲き、主として池辺など水の中で生植し、また畑で栽培される。はなしょうぶは花の種類が多く園芸変種の変りばなが随分多い。濃紫、淡紫、紫紅、白色、その他に変化のある花色染分けの花が多い。紫ばなが原種だといわれているが、江戸時代から花菖蒲の園芸栽培が盛んになり、東京、伊勢、熊本などことに有名である。伊勢に熊本は園芸の花作りが昔から盛んであり「伊勢菊」「伊勢なでしこ」「肥後菊」「肥後菖蒲」「肥後つばき」江戸の「朝顔」「花菖蒲」など古い浮世絵や草紙本にも出てくる花である。アヤメ、カキツバタ、イチハッ‘ハナショウプ、シャガなど、いずれも「アヤメ科」に属する草花で、洋名でいえばアイリスということになる。また反対に洋花のダッチアイリスやベアーデッドアイリスは日本流でいえば「アヤメ科」ということが出来る。とにかくハナショウブは品種の多い花であり、園芸の技術によって変り花を咲かせることの出来る趣味の花だが、私達が普通一般に活けているのは三弁の淡紫色の花が多い。この種類のものは花が咲くと花弁が垂れて形も悪く日持ちもよくない。六弁の花、九弁の花になると花首も太くしっかりして、大輪の花が咲き「重厚」という感じそのままの、華麗さで、切りばなでも開花して一週間程度は美しく見られる。六弁花(この。ヘージの花)は普通、花屋の商品としてはほとんど見かけられないが、園芸家が品種を集めて楽しむ、というこれは全く趣味の花、ということになっている。八重咲き、車咲き、獅子咲きなどといって、椿の変種のように変化のある花を咲かせる技術の花でもある。そんな次第で私達花を活けるものにとっては、材料として特殊な部類のものだが、大輪花で強い色彩としっかりとした形は、大変魅力のある材料ということが出来る。今日、宇治市南郊の鳥島氏の菖蒲園へ行き、その帰りみち宇治川べりを歩く。平等院の堤から橘橋を渡ると塔の島である。数年以前にこの塔の島から向う岸に梧が出来、これが朝[癌橋といつoこの柄を渡ると宇治神社、興正寺がある。宇治山の山裾の名勝である。やがてこの追は天が瀬に至り、志津川への山路に入る。陶器の朝日焼の窯元がその道すじにある。宇治川と花菖蒲、平等院と花菖蒲、この二枚の写真をとることが出来たが、歴史の場所を背景にして見る花は一雇、情紹を感じさせるものである。花菖蒲という花はその紫ばなと緑の葉が古い日本の古雅な味わいに調和するのだろうし、古い建造物と庭の花菖蒲の紫は全く日本の色といえる。宇治川朝霧橋宇治川には歴史がある。その速い流れにそうてあさぎりもともに流れて行く。

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