テキスト1975
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考えてみると私達の生活の中にはガラスが余りにも多く使われている。窓ガラスと食器、花瓶と日用雑具に至るまであらゆるものにガラス製品がある。全く私達の文化生活に切り離せないのはガラスである。そして、それがあまりにも身近かに多くあるが故に、ガラスに関する注意も散漫になっているのではなかろうか。私達は陶器に対してかなり広い知識をもっているが、専門的なことは別としても平均的日本人として陶器とガラスを並べてみると、陶器を理解する人は断然多いが、ガラス器に関しては意外に知ることが少ないのが一般的だと思う。日用器具として陶器とガラス製品を考えてみると、ほとんど同じ程度に多く使われているのに、美術的な作品となると陶器がその大部分をしめており、大衆に理解がもたれているのに対して、ガラスの美術工芸は一般にまだまだ遠い距離にあると思われる。便利な日用品や雑具としては必要なものであるが、高級なガラス芸術はまだまだ身近かになり切らない、というのが現状ではなかろうか。いけばなの花器としてガラス器を使うことは比較的少ない。従ってガラス器に対する私の知識もまことに乏しいのではあるが、今月と来月号テキストに「ガラス器のいけばな」を掲載するにあたって、いささか断片的な話を書いてみることにした。今日、ガラスは私達の身近かにあ⑥ ⑦ このガラス器はフランス製。淡い緑色褐色の線条が明るい感じである。ダリアの淡紫色とクロトンの葉。斜に挿して足もとを見せていない。半透明のガラス器(チェコ)。濃紅色のデンドロビューム,ハミルトンの花クロトンの股緑とタマシダ淡緑の配合が軽やかに美しい。ミぞ4

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