テキスト1975
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c荒目の籠、これも魚籠を写した花器である。どっしりと安定感があってかなり大きい花が入る。黄花のカンゾウ、紫キキョウ、ナルコユリの葉、この三種を活ける。横はりの籠に調和するように、たっぷりとした形に活ける。三種の材料の色と形の調和を考えて取合せた。15センチ程度の短い草花だが、いけばなの材料⑪東北地方から北洵追に咲く「スズラン」のはな。まことに可憐でやさしい花である。高さというよりも小さくつっこみ挿し程度の花、というのが常識になっている。にしっかり活けてみようと考えた。誰かの句に「思いきや、はずかしながら赤頭巾」というのがあるが、遠料を迎えた男が自分をかえりみて年齢に比べて自分の低さにてれている姿だが、今日はこれを籠に活けて、籠の投げ入れの形実は私も「スズラン」一種を普通の瓶花に活けたことがない。ちょうどこの句のような思いで籠に活けてみると案外、楽な調子にすらすらと入る。この材料は寸法も少し長かった加減もあって、黒い籠に白緑の葉と白い花がよく調和して実にやさしく美しい。みじかい花茎を右と左に一本ずつさし出して調子をつけたのだが、籠の清楚な美しさにやさしい花葉がびったりとして、これはいい、と思うほどしっくりとした感じの花が出来た。5

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