テキスト1975
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R古い籠である。の籠だが「へちま籠」又は「寿老」などといい伝えられている。この籠には、アケビ、サンキライ、青楓、ササユリなど、自然の垂れものがよ<闊和するのだが、ここではカスミソウと紫桔梗の二種を挿した。軽やかに明るい感じの瓶花である。かなり大ぶりの籠なので花形もゆったりと入れることが出来る。向うがけ(整かけ)これも先代よりの瓶花である。R牡丹籠(ほたんかご)の形式である。京都の大徳寺近くの籠師が丹念をつくして製作した籠で精巧な仕事が中々よく出来ている。この籠は手のリンカクの中に花を形づくるか(先月号に作例あり)この写真のように手の外へ花葉をさし出す場合、どちらでもよいのだが手の後の部分まで花材を差し出してもよい。花器の形は大きいが花は軽やかにのびのびとした渦子に入れる。籠の花器は清楚風雅な日本趣味の花器である。最近、柳の茎で編んだ籠にラッカーで色づけした様な容器もあって、必ずしも風雅という古い日本趣味から離れた感じのものもあるのだが、花入れの籠という常識的な考え方では、日本座敷のいけばなの花器というのが一般的な見方であろう。今日、生活様式が変化し、第一、床の間というものも段々と少なくなって、部屋の装飾装附も変化してきている現状では、籠花器のもつ静けさと自然趣味というものが、ぴったりしないのも当然といえる。籠花器は初夏から秋へかけてふさわしい花器、という季節感(こんな考え方も日本の風雅の情感である)も段々忘れ去られようとする今日、籠花器が大衆的でなくなるのも当然のことであろう、と思う。R 4R

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