テキスト1975
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私の家には籠花器が五十個あまりある。中には先代の遺品もあり、その後に私の集めたものと合して、が、みなそれぞれ形が変っていて、いっても随分種類の多いものと今さらの様に感心する。先日、京都の籠作家小菅氏の展示室で見た種類は三百種もあっただろうか、随分あるものと思ったが、その中には伝統の形式の籠もあり、新しい考案によるものもある。古い形式には「宗全」「末広」「唐人傘」籠」「桂籠」の様に形の定まっているものがかなりの数になっているのだ籠花器と「ぼたんあり、これら伝統の形の籠は古くから伝えられた形であるだけに、形といい編み目の技巧といい、さすが優れたものは時代が変っても、深い味わいを感ぜしめる。籠が茶道で好まれるのは、佗さびの境地に調和する自然と静寂という感じが、籠花器のもつ素朴さと一致するところにあると思う。籠入れの花は軽やかになんとなく挿し入れたその趣味が、花器の感じと調和するのであって、花道で活ける籠の花もそれと同様、自然の花の投入れ挿しといった調子のものが、いちばん好ましい姿である。Rこれは「提藍」ていらん、という。古い形式の容器で、先代の追品だが、これに茶道具などを入れて茶会に持って行った籠である。籐で編んだ中々の名品で金具などもよく出来ている。ていて、これはその下段に中筒を入れ花を活けた。姥百合(ウバユリ)とテッボウユリの二種、ウバユリは七月に入って山地に咲く野生の百合上段と下段と重ねになっで、ここでは葉の株だけ2本、テッボウユリ3本を配合した。⑧こまかい編み目の軽やかな手附籠、この様な簡素な籠には花も少なく入れるか、写真のような軽やかな材料が適している。雪柳の緑の葉と朱色の姫百合、常識的な取り合せだが細く美しい花である。手にふれないように美しい技巧で仕上げる。R @ 2

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