テキスト1975
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R小さい朱色のはな、「グロリオーサ、カルソーニ」という。印度百合とも一般にいわれているのだが、葉先がツル状になっており、これで木竹にからみついて登る習性の熱帯植物である。「とう」の葉もこれと同じように葉先でからみつく特殊な個性をもっており、珍しい植物の習性といえる。水揚もよく籠の花器に調和のよい材料である。美しい編み目の手附籠に清雅な感じの花といえる。c アリアムcあけびのツルで作った籠、がっしりとした味わいに民芸的な野越がある。アリアムの細い曲線の茎、ヒマワリの黄色褐色の大輪、ギボウシの葉のたっぷりとした白緑の葉、この三稲で瓶花を作った。口の広い花器は株もとを一方へ片よせて、一部分に花器の内部が見えるように活けると形がよい。渋い好みの花器だが、花材はかなりのびやかな材斜である。花器は渋いが花は意外に明るい。c 器は軽やかな日常花器と考えられるのが一般だが、金犀器、陶器、ガラス器、竹器、籠花器いずれにしても芸術的な高度の作品から、日常雑器と見なされる程度のものまで、その一っ―つに格差があるのは当然である。籠花器にも伝統形式のものから今日的な新しいエ夫のあるものまで随分種別が多いし、古い伝統様式の籠の中には美術品として優れたものがかなり多く見られる。現代の籠作家の中にも美術展に出品するような名作もあるし、その優れた作品は陶器の工芸に比較して劣らない高度の作品があり、花を活ける私達もこれをよく理解して注意する必要がある。古来、中国には籠の名作が多かった。マレーシア南洋諸島の上民の中にさえも日用器具の中に、精巧な籠製品が見うけられるのは、巧まざる美、いわゆる民芸としての粕緻ともいうべきものであろう。先日、京都の籠作家小菅大峰氏のお宅を訪問して、展示室にあった数百点の作品の中から、私のいけばなに調和しそうな籠を十点ほど選ばせてもらった。このテキストの写真に使ってあるのがそのときの籠だが、ここに活けたのはさきにのべたように、なるべく清雅な感じの籠の花器、またそれに調和するような淡泊な花材を選んである。普通の籠花器には日本越味の花がよく調和するし、それも分最少なく軽やかに活けることが、いちばん籠花器を引き立てることになる。壺の花器は技巧的に活け、籠の花器には投入風な簡素な花がよく調和するし籠の趣味にもよく調和する。重厚優美な作品も多い。籠花3 籠の趣味⑧ 黒褐色手附籠カルソーニあけびの籟ヒマワリギボウシグロリオーサ

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