テキスト1975
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いけばなに使う花器にはいろいろな種類のものがあるが、その中で一ばん多く使われるのは、壷、水盤、鉢の類、皿の形をしたものなど、この系統のものが多い。それが陶磁器で作られ、金属その他いろいろな製品があるわけだが、現在私達が使っているものを考えてみると、ほとんどが陶器ということになる。さて、壷といい水盤といい、近頃それに類するものが非常に多くなり、実に複雑多様になってきたが、そもそも壷という言葉を考えてみると、いわゆる壷形のつほ、形がまる<てふくらみがあり口のつほまった容器、これが壺と名付けられた形である。茶壷の形、あれが基本的な壷の形に迩いない。「つぼ」という言葉はその他いろいろに用いられている様だが、要するに「くほみ」のある深い穴の様なものをさす場合もあり、或はその場所をさした言葉でもある。中世時代には宮殿の中の問や、中庭の平地などを「つぽ」と呼ばれた様である。「壷焼」という貝のたべものの壷の意味。地面に穴を掘って柱を立てることを「壺掘り」ということから考えても、める」という言葉からも、深い穴の様ないれもの、或はいれものを作ることをさしており、花器の壷もこれから始まった言葉であることが想像される。ところが最近は、壷形でない容器も一般的に「つほ」といわれている場合が多い。口のせまい下部のまる<ひろがりのある器を壷といえば誤りはないのだが、それならばそれ以外の形の陶器について、応の区別と名前をはっきりしておくのが、常識的にもよいことだと思うのである。「つぼむ」「っぽ一鬱まるい形の壷は意外に一般向きしないようである。柄古場に丸い形の壺が相当数あるのだが、すすんで使うという人達が少い。細く背高い形の花器が一般的に好まれるようだが、活けやすく材料が留めやすいという関係もあり、丸い壷は花器だけみるとずんぐりしてなんとなく剣山を利用する乗りがしないのであろうが、活けてみるとまた意外に格好よく花がおさまるのも、この種類の花器の特徴ともいえるのである。この月号のテキストにはこの傾向の花器を選んで瓶花を活けたが、たっぷりとした感じの花、厚味のある花形を作ることが出来、花を入れると意外によい。花器の中に剣山を入れて活けると留めやすい。Rデンドロビュームとクロトンの葉。花器は紺色の壷、この壷は南瓜の形を模したもので口もとは小さい。デンドロビュームを3本、花をかためてまん中に入れ、その左右と後方にクロトンの葉を3枚(足もとを曲げ、竹の足をつけて)さし添えた。形も変っているが明るい感覚の瓶花である。cサンザシの細い枝を4本、淡紅の椿を副材に添えた。サンザシの下葉をとりさり、椿も下葉をかなりとり去って、細い枝の線のみえるように考えて活けた。軽やかな感じの瓶花である。壷の重い感じに対照的に花を軽やかに入れた一例である。花器は赤褐色の壷である。c 5

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