テキスト1975
41/147

専渓この月号の作品は10作ほどだが、変化のある作品が多い。かなりの大作でいけばな展の出品作と思えるような力強い作品が5点ある。1ページの「ゼンマイ、スカシュリ、タチヒカゲ」の盛花は、それほど大きい花ではないが、しっかりとした感じの盛花である。やさしい草花の配合であるのにがっちりと組み立てた技術があって「ゼンマイ」の立ちならんだ茎の美しさ、その黒褐色の茎の色に紙いオレンジ色の「スカシュリ」の花、緑の葉、すそもとに挿した「タチヒカゲ」の緑、色彩と形のよくととのった盛花といえる。花器は黄土色の長円形の水盤で、同色系統の色彩配合である。この「ゼンマイ」は鹿児島地方の山地に野生する羊歯(しだ)の一種だが、数多く挿して直線の茎が立ちならぶ様に挿したところに特徴がある。形と色に個性のある配合だが、この盛花を活けるとき、特に注意したのは「ゼンマイ」を数多く挿して匝立した茎の並べ方と空間の美しい配列、頭にまる<殊」いている茎の面白い形、これを数多く使って少しューモアの感じのある個性を強く感じられるように、そこに特徴を出そうと考えたのである。普通の盛花の場合、石、六本程度の分量でこの「ゼンマイ」を挿すと平凡に見えるだけでなく、いたずらに変った趣味を好むようにも見え、かえって品格さえ下卑に見えることが多い。野生の材料によく見うけられるきたなさを慇じるものである。山の湿地にある野草のいやらしさ、そんな感じに見えないように、活け方に工夫したい。クマガイソウ、マムシグサ、ハナバショウなど同じ系統の材料だが、清潔な感じに活けあげるように考えたいものである。材料の引きたつように工夫をする.... 毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1975年4月発行No. 142 しヽけばな

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る