テキスト1975
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小品三つの配合である。墜かけの花器は淡い褐色の皮製で、これはインドネシアの民芸品。渋い褐色の図案があり「ししゅう」様のエ作が加えられてある。花はユーカリの葉の白緑色、それにホンコンフラワーの「。フリムラ」の花が入っている。これは淡いビンク色でこの花器の異国趣味と意外に調和して、けばけばしくないし、ほとんど造花とは見えない。花展の花だからこの程度のものを使うのも而白い。右下のカユウの花、左下の百合の実とレナンキュウラスは自然草花でレナンキュウラスの真紅の大輪花が三作の配合の中の強い色彩で、全体を引きしめて美しい。レナンキュウラスの花器は黄士色の鉢様の花器で簡単な曲線の彫刻があり明るい感じをみせている。右下のカユウの花器は京都宇野仁松氏の陶器で重厚な感じがある。渋い紫紺色で手造りの形の素朴さがある。この三つの花器は全体に渋い色調と民芸風な落培のある花器だが、そんな点で共通した味わいがある。それを意識して取合せたのだが、一瓶の花形だけでなく、技術のよしあしを考えるのみではなく、花器の配合と色彩の配合、花と花器との感じの結びあいを考えて配合すると、花席そのものから―つのふんいきが生れることになる。5ページの「カユウ」を活けた花器、写真でもよくわかるように陶器としては実によく出来た花器である。ころが実際活けてみると活けにくい花器で、私が買ってきてからすでに十年以上はたつだろうが、活けたのは二三回程度である。花器の中でも、いちばん難しい厄介ものの花器である。色は紫青色の弔厚な感じの作品で、いい花器だな、と思いながら、いつも失敗に終る花器で、こんな花器はちよっと珍しい。或は自分の活け方が悪いか、花材のもって行きようが悪いのかしらないが、今度、カユウを活けてはじめてこれはいい、と思う作品となった。十年目にはじめて気にいったという、へそ曲りの花瓶なのである。高さの割に口が大きく鈍重な感覚で、その上、色がどの花をもっていっても調子が悪い、という関係もあってよほど出会いがよくないとすっきり見えない、というわけだが、カユウを活けてみて白い花がよくうつること、大綸花がよいということ、こまかい葉ものは駄目でおおまかな感じの草花、洋蘭の大輪花などがよいのではないかと思われる。皆さんの持っている花器の中でも、きっとこんな活けにくい花器があるに違いない。自分は調子よく活からないのに、他の人が活けると感心するほどよく見える、といった花器があるに違いない。人間にも合性(あいしょう)というものがあるならば花器と活ける私達にも合性があるかも知れない、などと苦笑しながら考える次第である。ともあれ、棚の隅に埃をかぶって十年、不遇をかこっていたこの花器も、ことし新年早々からやっと陽の目を① 見たということになる。まことにめでたい。いつ活けてもよい花が入らない。私の4 不遇の花器造花(プリムラ)ユーカリ’‘ , と

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