テキスト1975
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など最近、花展などでよく見かけるのはアンスリウムの花、それにストレリチアの花である。はアメリカ中部南部地方の原産、ストレリチアは南アフリカの原産といわれる。現在は世界各国で温室栽培されているのだが、ことにハワイの園芸栽培は有名である。アンスリウムには約二00種の種類があり、ストレリチアは朱色の花のストレリチア、レギナ工と鈍い白色系統の大輪アンスリューム花ストレリチア、オウグスタが私達に見なれている種類である。ストレリチアをいけばな材料に使うようになったのは約20年以前からだが、はじめ池田方面の温室で切るのは中々大変だった。10年目に花が一本登る珍花だから、などと恩にきせられて切ったのだが、今では花屋のウインドウには必ずといってよいほどならんでいる大衆の花となった。オーガスターは今日でも珍しい花の種類になっているが、強くするどくて大型の花で、南米ナタール及びケープ地方の森林に野生する種類で、普通のいけばなに使いにくい重量のある熱帯花である。専ら花展用として使われている。アンスリウムの強い赤色の花を花展などで使われているのを見かけるのだが、どうも用い方がよくない様である。洋花だから洋種の葉ものを添えて活けるような感覚では、この花を活かすことは出来ないし、二本程度入れたのではむしろ反対に平凡になってしまう。五、六本入れてあしらいはむしろ山木の大葉の緑葉、黄葉紅葉の山木などが意外に調和のよいものである。すすきの尾花とアンスリウム、緑の男松にアンスリウムなど意外に調和がよい。よく似た感じの花、ストレリチアも同様な考生方がよいと思う。ことにオーガスタなどの重量の花はその強烈な感覚を利用する様な考え方で、枯花の大型ヒマワリ、野原に野生のタラの木などよく調和するだろう。花展用の材料だが広い洋室のホール、店のウインドウなどに人目をひくという点で面白いと思う。サボテンの類、ヘリコニアなど大形で強い個性の植物は、日本の植物の優雅といわれる感じとは同じに考えられない熱帯の異国趣味をもつ花といえる。線の太い黒人の歌、スペインの舞踏や南ロシアの民族舞踏にある個性の強さというものは、私達の日本の生活感情には強い刺激をうけるのだが、花でも以上の様な花はこれとよく似た強い印象をうける花といえる。したがってそんな必要のある場所に活けるときに、ストレチアやオーガスタなどを材料に使うのは面白い考え方だと思う。フォクスフェースという変わった材料がある。ナス科の植物だが「狐の顔」という名のとおり、黄色の瓜一本状の実が一本の茎に群がってついており、面白いが、普通のいけばなにはどうも、といった材料である。近よらないのが安全という花材であるトウガラシの種類で「観宜トウガラシ」と一般にいわれている秤類、強い色彩のこれも俗悪の代表みたいな材料である。夏季に花屋でみかけるが色の種類があって変っているのだが敬遠すべき材料といえる。日本の材料で夏のトリカブト、洋花のマーガレット、ブーバリジァいずれも活けて必ず落胆する花。ガーベラは大輪花の美しいのが花屋でみられるが、これも買うときあんなに美、商しかったのに、と思うほど活けてから悪く変化することが多い花。このごろの季節の花「なたね」、戦前には寒冷の凍土から短くなたねの若葉が立ちのほるのを見て、如何にも早春の季節感をうけて、なくてはならぬ材料で「菜花」ー—さいかと風雅に呼ばれたものだが、最近のなたねは栽培の関係があるのか大きくのびて、野菜の様な感じで活けると葉がしおれるという、信用出来ない花となった。古いころのなたねは葉が黄ばんでか和でやけた葉に破れ葉などがあって、風雅な感じだったが、今では面白くない材料になり下っている。木ものではザクロの実、木振りも見苦しいし葉も水揚げが悪い。南画のような風雅さが感じられない。花屋でみると美しい花なのに活けるとつまらないェリカの花。時間がたっにつれて群がった花の淡紫色が色あせてがっかりする材料。ひどいめにあったお話をしよう。余程以前の花展にシュロの実を材料に使ったことがあった。秋のとろ農園にあったシュロの実が黄色の実をつけ実に見事だったので、太く大きい茎を切って帰り、その翌日に花展会場で活けた。他の材料と配合して中々よい作品になったが、さて花展の初日に会場へ行って私の作品をみると、その作品からシュ実がゴマをまいた様に、台上いちめんに落ちている。とにかく掃除をしたが時間がたつにつれて、ばらばらと止めどなく落ちてくる。最初はそのたびごとに掃除をしていたが、なにしろ花瓶に入っているシの群がりは幾千というほどあることだから、いつまでとり去っても限りがない。実に大変なことになった。とにかく私の失敗話の一っとなって、夢々シュロは使わないことと、深い思い出に残っている。(専渓)ロの細かいュロの実花材雑話11 (アンスリューム)

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