テキスト1975
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いう便宜な形式で、これを教え習うことが生花の約束であります。四季を通じて多くの種類の材料があります。習うものにとってはどうすれば形よく活けられるかと考える場合に、いちばんよい方法を教えるのが伝統的な生花の約束といえます。型にはめるのではなくて、その方法を知ることです。大体、生花というものはその流派の代表的な花形―つでもこと足りるものです。材料の変るたびにその一定の花形に添うて美しく作りあげるさえ大変なことです。花形は同じであっても花材の変るたびごとにエ夫が変りますし、それぞれを美しい形に作りあげることは大変な技術を要することになります。また、自然の草木の中にはその材料のもっている変化のある形や、個性がそれぞれ変っているものですから、一定の花形におさめるだけでも大変な技術を要します。たとえば、こおりやなぎの様に細い枝ものの活け方、梅や里ざくらの様に太い木振りの材料、かきつばた、すすきの様に葉に特徴のあるもの、ぎぽうし、こうぼねの様な広葉もの、みなそれぞれ材料に個性があって、生花に作る場合、当然個性的な花に作りあげねばなりません。習う人にとっては、大変むずかしいことなのです。そのときに、伝統の約束というものが花形をよくするためにどれほど役立つか知れない、と思うのです。そんな意味で「生花の約束」を利用すべきだと思います。たとえば水仙の生花などこの約束に添わないとよい花形を作ることは出来ません。いわゆる葉組の技法が必要ということになります。要は正しい技法を習いその方法によることが、いちばんよい形を作ることになります。そのためにはしっかりとした技術の勉強をせねばなりません。中途はんばな未熟な技術なれば、むしろ瓶花、盛花に活けたほうが、はるかに花を引き立てることになります。技巧に溺れないこと生花は技術の多いものです。草木の枝葉をそろえ、ため、よせあわせ足もとをそろえるなど、活けるためには大変なテクニックを要します。生花を活ける楽しみは技巧を加えて花形を作る、というところにもあるのですが、ともすれば技巧を加えることを楽しむあまり、花材をいためる、枝葉をいためる、いつしか花の生気を失う様な結果になります。技巧におぼれない様に、手早くさっと活け上げることが必要です。ッッジに黄菊の生花。太くしっかりとした古雅なつつじですが挿花して写真にとり、更に写生したのですが、あまり上手の絵とは思われません。褐色の陶器に銅の中筒を入れ、それに活けていますが、中央に菊を入れその前につつじの枝を重ねています。雅趣のある「文人調」とでもいえる力強い作品です。つつじ菊ャ

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