テキスト1975
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ションの染色加工のものが花屋にある。青このごろ迎春用の花材として使われる苔松(こけまつ)。皆さんも気がついているだろうが、ほとんど男松に梅のこけをはりつけた模造品の苔松である。一本千円也の松も苔をはりつけると二千円にも売れるというので、年末の花屋の店に行くとよくみかけるのだが、十二月に入ると山村のおかみさん達の内職に、この苔はりをして手間を稼ぐとのことだが、実にいやらしいもので折角のおまっを下品につくりかえたように感じられて、買う人の心さえ疑われるような俗っぽい感じがする。ほんものの苔松は千葉県の海岸地方から送られてくる海岸の松が有名だったが、今日ではほとんど見られないようになった。私の若い頃、京都へ入荷する千葉の苔松は、それこそ葉色も隆々としてそれにまっ白の自然の苔つきの松で、送荷用の大篭(横一万0センチ、高さ一00センチ程度の大篭)にいっぱいつめて、ひと篭で30本程度の苔松が入っていただろう。それで百円也というのが相場だった。もちろんその中には枝振りの太いもの細いものとりまぜて、とにかく迎春用のいけばなは二篭もあれば充分だったが、なにしろ自然の苔つき松のことだから、その当時に切りつくしてしまったのだろうが、今日ではほとんど見ることが出来ないようになった。その頃のことを思い出すと、このごろの加工品の苔はり松をみると、イミテーション時代とはいえ、うら淋しい感じをうけるのは私だけではないだろう。このごろカーネ色のカーネーション、オレンジ色に染色したもの。すいせんの紅色、カユウの紅色、夏のためとも百合の紅色、いろいろな色染めの花がある。花の吸水作用を利用して染色インキを吸水させ花弁を染めるやり方だが、ひとばんで白いすいせんも赤く染まり、カーネーションも色を染めることが出来る。悪趣味の代表的なもので、全くこんな花が売れるというのは情ない次第。蘭の葉の刈り込んだものはいたし方がないとしても、ヤシ、シダの葉を刈り込んであるのを稽古用とはいえ、活ける私達にはなにとも情けない感じのするものである。お互いに私達は清新なうるおいのある花を活けることにしましょう。—ラッパスイセンふくべを横ぎりにした水盤様式の花器です。この花器には風雅な趣味の花材がよく調和します。カキツバタ一種,ササユリ一種などがよくうつるし,ュキヤナギに紅色の単弁小菊なども,よい調和でしょセンリョウう。写真の花はラッパスイセンの淡黄,赤い実つきのセンリョウ2種の盛花です。温和な好みの花ですが,静かな美しさをもつ盛花といえます。床の間に置くと謁和のよい花です。10

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