テキスト1975
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花•まんさく器・朱塗長方型水盤家庭に飾るいけばな、その程度の花は一瓶活けるのに約30分ほどで仕上げるのがよい。生花にしても盛花瓶花にしてもその程度で作り上げると花もいたまないし、第一に活ける人の心も身体も疲労しないうちに活け上げてしまうことが出来る。時間がかかればかかるほど結果がよくない。現在いけばなを習っている人達は常に気づいていることと思うのだが、心が疲労するにつれて活けている花材も段々とうるおいがなくなり、鮮度が落ちてくる。花に向って心の新鮮なうちに材料をよく見つめ、どんな形に作り上げるかをきめる。花器と花との調和を考えるのはそれ以前の問題である。活けはじめたならば手順よく、なるべく渋滞しないでとんとんと進めて行く。心の中で歌いつつ楽しみつつ花を進めて行く。そのくらいの心のゆとりがあれば結構という意味である。心を堅くして一生けんめいになっている状態がいちばんよくない。花も堅くなってうるおいがなくなるのである。いけばなには常に活ける人の心がのりうつる。楽しい花を活けたいのであったならば楽しみつつ活けるべきである。どうしたら花が楽しくなるかは、その個人の努力による、ということである。苦しみつつ苦心しつつ活けた花は、どうしてもその作品に苦汁が感じられる。R 白花りんどう5

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