テキスト1975
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山地に咲くミヤマシシウドは平凡に見すごされるのだが、この写真のようにオホーツク海を背景にして立つミヤマシシウドには、なんとなく孤高の美しささえ感じるのである。くさむらをぬいて立つウドの枯れた茎、利用価値の少ない雑草にすぎないこの草も、この網走の海岸風景では立派に役目をはたしているように見える。エゾゼンテイカといわれるこの花は橙黄色のユリ科の花である。一名ニッコウキスゲとも呼ばれている。北海道の原野に野生するノカンゾウの一秤である。札幌市郊外からこの網走まで、国道にそった野原に広い牧場のある周辺に群落をつくって咲いている。関西に多い野の花キリンソウが意外に少ない。山地に多く咲いている北海道のフジバカマはことに美しい。広い原野を単線の汽車が走っている。釧網線である。「原生花園駅」というのがあって見かけは寒々とした駅だが、待合せのお客さまはまことに華やかな女性逹と男性の若い人達。草原の末までつづいている細い線路が網走という名とともに、北固の梢結を感じさせるのである。いつくるやらわからないSLの列車を待つ若い人達は低い雲の知床へ行く人達であろう。ー璽11 , ← , /` _ _,.,

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