テキスト1974
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桜のおわる四月下旬ごろからいけばな材料も初夏という感じにうつり変わってくる。かきつばたの花葉も色を増し、草花の類も五月らしい初夏の草花がいろいろみられるようになるのだが、この中に初夏を一庖深く感じるのは樹木の新緑である。私達は五月の花材に木々の新緑を活けて初夏の季節感をあらわそうとするのだが、なつはぜの若葉、青楓、山梨、あせび、ほうの木、びわ、さんきらい、つゆつばき、いたやもみじ、などがいちばん多く材料として用いられる。木々の若葉は水揚げの悪いものが多く見た目にはすがすがしく感じられるが、切りとると水揚げが悪い、というのはよく経験するところである。その中に若葉の水揚げのよいものもあって、私達の経験から新鮮な緑が美しく、しかも水楊げのよいものを選んで使うことになる。楓は秋の紅葉は水揚げが悪く初夏のころは水揚げがよく、しかも季節的に好ましい。山梨は三月ごろ、若芽を出すころから宜月の広葉になるまで、白緑の葉が草花との配色もよくことに水拗げもよく多く用いられる。あせびの木は枝の形もよく葉が群がってかたまり、新緑のころはいちばん美しい緑の花材である。山梨あせびなど最も多く用いられる材料といえる。いたやもみじは枝振りもよく葉色の緑がことに美しく多く用いられる。ほうの若葉、さんきらいなど、その他の山木にも好ましいものが多いが、特に「初夏と新緑」という感じを出すために、好んで用いるのは、この季節の特徴といえよう。Rハナショウブの紫、アセビの新緑、すがすがしい感じの配合である花器は掲色の広口花瓶。これは五片頃の一般的な取合せだが、手軽に得られる材料で桔古の材料としてもふさわしい配合といえよう。ショウブになつはぜ、も同様の配合である。Rこの花は変わった取合せであるシマガヤ、ヒマワリの黄色、グズマニャは朱色黄色緑色の交わった洋花でアナナスのような形をしている。南方の花を慇じさせるような色調は、瓶花としても而白い異国桔紹を憾じさせる。花器は黄土色の四角瓶゜6 ー

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