テキスト1974
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水仙、つばきが咲きはじめ、冬の季節に入ったことをしみじみと感じさせるものである。それと同じようにしゃくやくの花が咲き終わって少し汗ばむ初夏の季節に入ったな、と思11月ごろになると、紅葉とともにうころ、ささゆりの花をみるようになる。山木の新鮮な緑とともにちょうどその季節に笹百合を活けることになるのだが、山の花も多い中にとりわけこの笹百合は清純にして風雅、やさしく可憐な悟結をもっている。五月より七月へかけては百合のシーズンといえるほど多くの種類の百合の花が咲く。テッポウユリ、ヒメユリ、タケシマユリ、スカシュリ、クロユリ、オトメユリ、タメトモユリ、ウバユリ、アマリリス、リーガルリリー、オニュリ、カノコユリなど多くの種類があるのだが、その中に日本的な雅趣と気品をもっているのは、このササユリであると思う。ササユリは、その葉が笹の葉に似ているのでこの名があり、またサユ(早百合)ともいわれるのだが、これは山百合の中でいちばん早く咲く、という意味で名付けられたものであろう。全国のどの山地でもッツジの葉やススキの若葉にまじってササユリの花がひときわ美しく咲いているのをみかける。山でみるササユリはことに清らかにみえやさしく清楚である。この号のテキストには、ササユリの瓶花盛花を八つ作った。さらりと高くさして細々とした茎の美しさを見せるように活けるのがよい。みずみずしい葉の美しさの引き立つように活けるのがよい。ささゆりの初夏専渓毎月1回発行桑原専慶流リ編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1974年6月発行No. 132 いけばな

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