テキスト1974
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1974年1月発行黄色を増し、一日一日と枯葉に近づいて行く。舗道に群がって落ちるころになると、褐色の葉がからからと風に追い立てられるように音を立てる。心なく足もとに踏みづける落葉をながめながら季節のうつり変わりをしみじみと感じるのだが、今、散り落ちたばかりの新鮮な菜の中から、それが枯れ葉とはいえ、緑から黄色へと染めわけている美しい一葉を手にとって、自然の彩色のあざやかさをみつめるのである。その落葉の中から美しいものを10枚ばかり集めて、あらためてながめてみると、葉の形も面白くいけばなの材料に使ったら、きっとよい花になるだろうと、枯菜を活ける楽しさに、附近の私の家へ歩きながら、さて、どの花器にしよう、あしらいの花は何にしようなどと考える。恋の歌くれゆく秋の日よ金色の枯れ棠ちるつかのまもえたつ恋に似た落ち葉よシャンソンのメロディーをくちずさみながら、この花を活ける。この写真の花は、桐の実の褐色、デンドロビュームの明るい紅色、。フラタナスの枯葉を二枚あしらって、細口の花瓶に活けた。歌のようには廿くないいけばなだが、きりっと引きしまったところが技巧である。初冬の私の机辺から思い出のような小品花を、皆さんの心の中に贈る。11月に入ると街路樹の。フラタナスの葉が(ジョセフ・コスマの枯葉より)専渓いけばな毎月1回発行桑原専慶流冨-編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元No. 127

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