テキスト1974
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R荒目の篭に中筒を入れ、ハタウコン、カキツバタの二種を活けた。黄褐色のハタウコンの花、風雅な枝振り、これにつけたカキツバタの紫の花と緑の葉が、自然の色彩の美しさをみせている。ハタウコンは山地に野生する落葉喬木(きょうぽく)だが、初冬のころ掲色の芽がふくらみ二月より三月へかけて素朴な花を咲かせる。チャガラ、マンサク、ハタウコンなど、いずれも雅趣のある山木で、早春の茶室の花として賞美される。いずれも風雅で清寂な感じの木ものである。京都の北山の大原女のおばさん達が、柴の束とともにハタウコンの大きい束を、黒もじなどと共に持ってきたことがあったが、そんな情緒の深い材料である。京都北山の花背峠にこの木が群落になって、渓間に黄色の群りをつくっていたことがあったが、花背といいハタウコンといい、所を得た花木の姿に雅趣を覚えたものであった。カキツバタとの出会(であい)はことに詩的であり、日本趣味の代表的な味わいといえる。8 R

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