テキスト1974
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べにさんごの枝すかしゆりべにさんご(楓)の残り枝、きっさきのない枝もとを、さらに切り揃えて花瓶に挿した。花瓶は白泥色に沈んだ青色の上ぐすりがかかっている。すかしゆりのオレンジ色の崩花つほみのもが、葉の緑とべにさんごの深い紅色が配合して、はっきりとした色彩感と、形の強さがよく調和して、快な瓶花となった。の2本、高くつき出すように挿した創作的な明のまれてはいけません。花に打勝つような強い考え方と、細心の注意をはらって、徐々に着実に進行することです。同じようなことを繰り返して、いつまでたっても仕上がらない、というやり方は、見ていてもいら立つ様なもどかしさを覚えるのです。時間を長くかけることは、自分の心も身体も疲労することになります。自分の花が時間がたつにつれて段々と疲労の色を増していることに気づかないで、なお躍気になって、状態は少しおかしいくらいです。自分の心と体力が新鮮なうちに花を征服するような、溌測な考え方にこそ、みずみずしいいけばなが作れるのです。花を活ける進行中はどんどんと、心配せずに切り込むような、そんな自信と活気がなければいけない。花材に打ち膀つような覇気を持たねばいけない。萎縮した花がいちばんいけないのです。そしてその中に粕密な計舞と配慮を必要とすることは勿論です。いけばなは技巧だけでは成り立ちません。考え方が常にともなってこそ、早くも仕上がることになり、完仝な花を作ることにもなります。要するに花に勝つことです。思うままに花を柾服してこそ、その花をより以上の美しさに作り上げることにもなるのです。花材を持ち上げしながら心配げにしているあなたをみると、先生の私も情なくなります。しっかりしゃんとして、花材をもって活けはじめる最初から終わりまで、細部のことはあまり気にしないで、大きな部分、最もよい骨組みをしっかり見定めて、根底をしっかりときめることです。細部の修正は最後にする。瓶花盛花は普通なれば20分程度に、生花なれば40分程度に必ず大体を仕上げるのが常識です。仕上げの細部にとりかかって約10分程度、これで完成という程度にしなければなりません。この私の手紙があなたのいけ花に役立つことを祈ります。枝葉花をいためつけるあなたの精神花に打ち勝って下さい。それから後に11 @

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