テキスト1974
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(意匠花)けいとうほうづきを材料にして青森から秋田へ、私達は自動車の旅をつづけた。京北地方の山と森、田園と村落の起伏のある美しい風景は、道の見える限り沿みきった空間を水彩画の様な迩明な色彩で、私の目の前にあらわれ、あらわれては後方に走り去った。宵森の祭りをきのう見て今日は秋田の祭りを見ようとする、私逹のスケジュールは実にあわただしいけれど、まことに恵まれたものであった。秋田の竿灯祭(かんとうまつり)も炎のカーニバルであった。幾十の提灯を竹竿のやぐらに釣って、った。広い道路の緑地帯に観翌席かあって、出来た。すっかり暮れ切った大通りの一方からこの写真にあるように、竹やぐらに組み立てられた提灯の列が、喚声のどよめく中を近づいてくる。これは全く男の熟練による芸能ともいえるものだが、相当重量のある竿灯を腰に乗せ、頭にのせ、片手でつきあげ、或は高く突き離しそれを控えの男に投げ渡す。そのたびごとに灯火がおどりゆらめき、提灯が大きく動いて、実に見事であり、雄渾といった強い感党をうける。六、七才ぐらいの子供達の集団もあって、同じような勇ましいいでたちで、少し小型の竿灯をささげ、同じように手練の芸を披露する。全くこれは祭りの領域を越えたサーカスの演技のように思えた。この竿灯の列は数百メーターも続いて、その中には観客席に横倒れに倒れこむものもあり、実に壮大であり、はげしい景観をもつ夜祭だった。それが百数十基に及ぶという、実に壮大なものだ私達はそこに座って見ることが(花に活ける)秋田の竿灯祭

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