テキスト1974
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R細口の銅器に活けた白椿一種。これも、前方に垂れた枝に特長のある花形である。右方へのびやかに出した枝、上方へ立つ細い立ち枝、前の垂れ枝、左方へ出した枝の線、この四つで花形が作られている。前の垂れ枝は背高い花器の前面を飾るような心で開花の花を入れ、中央の花形の中心と思われる場所へ中開のしっかりした花。全体がしっかりとしたまとまりを作っている。さきにお話したように椿のいけばなはどの場合も、枝葉の空間で形を作ることになるので、そのつもりで材料を選ぶことが大切である。群がりにぎやかに入れた椿のいけばなは、形も悪いし品格に乏しい。また、どの瓶花でも花器の背高いときは、前方の下部に花葉を垂れさせて、花器と花との結び合いを作るように考えることが必要である。また、これも瓶花の場合に全体的にいえることだが、口もとが小さくて、下部の張った花器には、花形の水ぎわが口もとで小さくしまり、上方で広がるような形に作ると格好がよい場合が多い。Rチョコレート色の広口花瓶に剣山花留を入れ、アイリスの淡紫、せんりょうの赤の実と緑の葉、ほうの葉の枯れ葉、この三種を活けた。中央のほうの葉2枚の前へせんりょうの枝を左右にひろげて入れ、ホウの葉の後方にアイリスを4本挿してある。花器とほうの葉の褐色調に対して、せんりょうの緑の葉と実の赤が.. .. 鮮明な色彩である。左右均斉の対照形の花形だが、右に重く左に軽く入れて変化を作っている。少し変わった感じの日本趣味というところ。瓶花盛花は、花材の線と面とによって花形が作られるのだが、同時に枝葉によって作られる空間(すきま)についてよく考えねばならぬ。すきまの形その形の美しさについて注意8 . R 白椿一種••

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