テキスト1974
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花屋でみつけたまゆみの木だった。十二月のはじめだったので、実の色も少しやつれてあわれだったが、なんとなく心をひかれて活けたのだった。枝振りの粗野にひろがった形をそのまま、花器にたてて小枝を少しとり去ったままの自然風な花形だが、それなりに野趣があって面白い。足もとに白い単弁の小菊をつけて、これは技巧的にはっきりとした形をつくり、ことにみずぎわをしっかりよせつけて、びんとした生花の花形を作るようにした。白泥色の背高い壷。有名なU氏の作品としてはよい形とはいえない。老大家の陶芸家も新しい形には弱いものだということがわかる。さて私が買ってきた余程以前の花器だが、こんな中途半端な花器を買う時代が私にもあったのかと思われる失敗の買物である。さて、背高い花器をと思ったのでこの花器を使ったのだが、花材は淡紅色の椿一種。前ページの椿の生花と同様、椿は瓶花の場合も盛花の場合も、花葉を少なくして枝のまばらな線の引き立つように活けることが大切である。美しい枝線の立ちあがり、花は白い壷の前へ垂れさせて色彩の配合を考えた清楚な変わった花形の垂体。7 ... (瓶花)淡紅つばき一種(生花)まゆみ白小菊

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