テキスト1974
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八月は一年中でいちばん花の少ない季節である。花壇で栽培する花でさえ、稲類の少ないシーズンだが、ことに切り花に適当な花というといよいよ少ない。グラジオラス、ダリア、けいとう、すいれん、オミナエシ、トルコキキョウ、百合の類が少しある程度。節といえる。九月に入るとどうやら新秋の気候が動きはじめて、シオン、トリカブト、はげいとう、ジニア、いちょうけいとう、など秋らしい花が目についてくるのだが、それさえも本格的になるのは中旬をすぎてのことで、八月より九月はじめにかけては、季節らしい花はほとんどない。蓮は八月が盛季といえるのだが、これは特殊な材料で一般のいけばなには適当でない。最近は蓮の花も新種の美しい花が栽培されるようになったが、園芸栽培のためには好ましい材料といえるが、普通のいけばなにはあまり使えない花といえる。練習用の花材ぐらいは、七月の残り花や、なんとか工夫した花で活ける状態になるのだが、とにかく、暑い折柄であるから淡泊清爽な感じのもの、緑の葉を主にしたあっさりとした清涼な感じの花材を選んで活けるようにしたい。軽やかな小さい花器に少量の花を、投入れ風に挿すといったのが好ましいと思う。さて、この月のテキストは、ダリめぼしい花の少ない季アのいけばなを特集したのだが、派手な色彩のダリアは、暑い夏の花としては、いけばなにも不向きであり材料としても九月中旬より桐花する花であるから、秋に入ってから活ける花材といえる。ダリアは六月、七月が夏咲きの品種、九月から十一月へかけて秋咲きの品種と季節を二つにわけて咲く花だが、主として露地観貨に適する花で切り花にはカクタス咲き、デコラチューブ咲き、ポンボン咲き、ジングル咲き、姫ダリヤといわれる単弁咲きのものなどが適当である。新鮮な材料であることがいちばん必要であり、裏庭から切りとったような、そんな感じで活けるのが最上ということになる。いけばなによく調和するのはシングル咲きの種類であろう。私達のいけばなという先入観に調和するのにいちばんぴったりする花である。大きい花のダリアや色彩の強い花は普通の瓶花盛花には活けにくく、このページにあるような特殊な装飾性の多いデコレーション形式に活けると、花も引き立つことになり、特殊な感党を作り出すことが出来る。ダリアは夏咲きと秋咲きとにわかれる。いけばなに適当なのは九月下旬から十一月まで咲く秋咲きがよい花ものびのびとして美しく、日持ちがよくしっかりとして使いやすい。2 R 花瓶を三つ使ってダリアを活けた。配列を考えた装飾花である。聾が

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