テキスト1973
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実ものは執~(う)れたものはよくかりん単弁小菊cRさんきらいすかしゆりかりんは高さ10メータ一にものびる喬木であって、春四月ごろ淡紅の小さい花をつける注佗びしい感じの花である。夏になって大きい果実をつけるのだが、食料にもならずその香気がよいので「かりん涯」を作る材料になる。実が大きいので風雅というよりも奇趣といった感じをもつ材料である。写真の瓶花はあまり大きくない黄みどりの実つきの枝を二本、これに単弁の小菊をつけて斜体の花形に活けた。花器は赤紫色のしんしゃ花瓶。ぶどうたましだ農家の庭から切ってきた「ぶどうの木」涙い紫の実と緑の葉の形が、ひきしまって格好がよい。ぶどうの実付の枝は風雅なものだがいけばなに使うのは、雑種の小粒の種類のものが形がよい。晩秋のころになると葉が紅葉して、枯れがれとした実が残っている姿など軽妙な趣きがあって面白い。花をつけないでタマシダの緑の葉をあしらったが、淡泊な感じがしてよいと思う。農家の箕(み)を写して作った意匠篭である。荒目に編んだ篭には竹の緑色がみえて新鮮な感じがする。さんきらいの実は黄みどりで、夏のころはまだ実も小さいが、なんとなく野趣があり篭によく調和する。すかしゆりは淡い黄色の花で、葉の緑色がみずみずしい。夏の花として日持ちのよい材料である。篭をかくさないように、軽く挿して編み目の見える様に活ける。特に軽やかな清楚な材料を選んで活ける花器である。、。し実ものを活ける場合に注意することを二、三書いておく。大体実ものというと重量のものが多い。たとえば柿、かりん、仏手柑のように果物の場合、実の重量によって花器が倒れることがある。特に注意がいる。実の分量を少なくして活けること、花器の重いものを選択すること、形の安定した花器を選ぶこと。したがって水盤には不向きな材料といえる。壷に活けたほうがよ柿、梅もどきなど、実を多くつけるほど品格がよくない。柿は枝先に数少なくついたもの、佗びしい感じがよく、梅もどきの類もまっ赤な実が多量についているよりも、枯淡な感じの枝にまばらに実がついているといった感じが秋の情緒を感じさせるものである。むべ、あけび、かりん、栗など同じ考え方がよい。重量の点もあり、とにかく素朴に清楚な雅致といった調子に作りあげることが望ましい。実ものを活けて賑やかに派手な感じは趣味が悪い。ない。若々しい青々とした新鮮なころの材料を活けると上品である。また反対に、枝に一っ二つ残った柿の様な情紹も面白いものだが総体にいって若々しい実に季節感を味わうことができる。かけばなに使えるのはからす瓜のように軽いものがよい。8 R @

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