テキスト1973
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夏のころ緑色の実が秋になって、紅色に色づくものが多いのだが、中には緑から黄色に色を変えるもの、褐色になるものもある。ぽけの実やかりんの実は黄色になって終わるのだが、藤の実やひまわり、春蘭の実のように黒褐色になって枯れるものもある。実の美しさや風雅は、自然の季節にしたがって色彩をかえてゆくところにあるのだが、山に野生する実ものには晩秋から冬にかけて、色づいてゆく自然を一恩深く感じるものが多い。ここに掲載した山藤の実は、どこの山に入ってもすぐみかけるものだが、雑木にからみついて立ち登る災に藤豆がたわわに垂れさがって面白い姿をみせる。さんきらい(山いばら)の実とともに、いちばん手軽に採集できる材料である。木の実の面白さ風雅さをいけばなに活けるという、しみじみとした自然を楽しむ心は、日本のいけばなの特徴ともいえるもので、外観の美だけを美しとする外国人の花の観貨と迩うところであろう。藤の実は一般に藤豆といわれR山る。夏に渋い緑色の実がなり、冬になると黒褐色に変わる。写真の藤は昨年に採集したもので褐色に渋い白が混色して落沿いた枯淡という感じの材料である。これに明るい黄みどりの葉「やまなし」の葉を添えて瓶花を作った。花器は生花の薄端(うすばた)の形に作った陶器で濃いねずみ色の花器である。ビラカンサス枇杷蜜柑桃桐の実椿かりんほけ柿栗仏手柑あずさ藤の実あおきがまばらいいぎり百合からす瓜蓮実蘭の実菖蒲ヒマワ杜若おもと南天むらさきいけばなに使う実もの夏から秋冬へかけて実ものの種類は多いが、その中でいけばな材料には、下記のようなものが多く使われる。大別して木の実、草の実ということになる。梅ぷどう未央柳蕊もどき夏季の瓶花には、木ものだけを二種とりあわせて活けることがある。清爽な感じがしていいものである。暑いころは花も日持ちが悪いので、実ものと葉ものだけで活けるといった配合は、意外にさっぱりとしてよい。藤の褐色に緑の若葉の配合が、花ものを添えるよりも美しく感じられる。ヤマイバラクンシランヤブコウジ青梅日扇2 ざくろせんだんナナカマドまんりょうなた豆こぶしの実うめもどきせんりょうR 山藤の実やまなし木の実、草の実を材料にしてリ風雅ないげばなを活けましょう

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