テキスト1973
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ささゆりは全国のどの地方でもみられる山百合である。五月の末から六月、七月上旬まで日当りのよい山地の草原に咲く。近郊の低い山道を歩いていると、思いがけなくも笹百合が一本二本と咲いているのを見ることがあるが、風にゆらいで咲く百合の花をみると、日本の花のしずけさをしみじみと感じるものである。七月初めになると、どの花屋の店頭にも笹百合がいっぱい集められている。ほとんど毎日々々、新鮮な花を山で採集してくるらしいのだが、どこにこんなにおびただしい花が咲くのかと首をかしげるのである。百合は種類の多いものだが、その中でいちばん、美しく清楚なのは笹百合であろう。実にやさしくつつましい姿をもっているし、高い品位さえ感じられる。同じ百合科の花に「かんぞう」というのがある。これも種類の多いもので、ちょうど山百合の咲く五月ごろより八月にかけて、全国の山野に自生する草花である。かんぞうにはとにした。笹百合は一、二本を小さい花器に投園芸栽培のものもあるが、これは野入れしたようなのが、いちばん生の花のほうが美しく、また雅趣が情趣があって好ましく、数多くある。入れるほど俗っぽく感じられるもどを添えるのはいよいよ品格を悪くすることになり、一種で活けてこそ味わいのある花である。生花の場合は、三本又は五本で活ける淡泊な花形が好ましいが、また多く七本までは活けられる。すらりと細く高い花形がよく、派手に賑やかな花形は笹百合の情紹から考えてもよくない。さらりと軽やかな花形がよいわけである。ささゆりに写生してこのページに掲載するこ今日、笹百合を生花に活け、簡単である。<瓶花盛花の材料として適当な花材ない美しい花である。また水揚もよ咲く平凡な花だが、野生種とはみえれている。農村の小川の草むらにも葉に似た、黄みどりの葉が左右に垂り、黄褐色の百合のような花に蘭の「ハマカンゾウ」などの種類があ「ノカンゾウ」「ヤブカンゾウ」のである。ことにこれに他の草花な12 _!,

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