テキスト1973
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牧野氏再訂(キミカゲソウ)、アマナルコユリとオオセイ(黄精)について、牧野富太郎氏の「増訂草木医説」ー—飯沼慾斉著増補(明治43年8月版)をしらべてみる。スズランドコロ、ワニグチソウ、イプキワニグチ、ナルコユリ、オオバオオセイなどは同種属の山草であって、いずれも「黄精」の中に入っている。ふいり葉のナルコユリは園芸種であって、この原種の園芸変種であろう。ナルコユリは一尺程度から四、五尺に及ぶものがあると記されており、オオバオオセイも四、五尺に及ぶとある。黄精は山陰の湿地帯に野生する草で、京都の近郊東山でみかけたことがあった。園芸で栽培されるものがあって、区別がわかりにくいが、これらはみな「黄精」の属であることは誤りない。スズランも同じ黄精の属であり、その葉の形や色彩、百合状の花がつらなっているのをみると、ナルコユリと同種であることがうなづける。このページの写真は、濃い白緑色の葉で「黄精」の栽培種であろうと思われる。葉の下部に鈴蘭に似た白花が連なって咲き、(五月ー六月)私達が花屋でみるものは、ほとんど花の終った葉のみの場合が多い。オオセイ(ナルコユリ)は形のよくととのった、いけばなに適した材料である。葉のならんだ調子が平凡ではあるが、盛花瓶花の低い位骰には使いやすい材料、といえる。大葉の黄精は一稲挿の生花にも活けられるし、茎が適当な曲線をもっており、足もとが美しいので、よい材料と思えるのだが、案外、大葉の種類は花屋でみかけることが少ない。R R荒目の篭にオオセイ、ササユリの二種を入れた。こんな花をみると瓶花というよりも投げ入ればな、というのが適していると思う。この二種の山の材料は同じ環境の草花なのでいけばなにもよく調和する。魚篭をうつして作5た篭の野趣と自然種の花材とがびったりとした感じをみせている。初夏の六月を象徴する花といえるだろう。Rこの篭も変わった形の篭である。乾燥した柳の茎で編んだ篭だが、たっぷりとしてかなり華麗な花を盛るのに適している。ササユリの淡紅、ダリアの赤、カラジュームの白と緑の葉三種。この花は篭の盛花ともいうべき感じだが、広い洋間の花、店内装飼としての盛花に適している。ダリアの赤をかためてあるところ、カラジュームの配置に注意した。8 ・ササユリオオセイ(黄精)

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