テキスト1973
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花の名はずいぶん多いが、その語源を考えてみるときわめて単純なことから始まっている場合が多い。たとえば、その花の形からきた名前、リ、コデマリ、の様に花姿をそのまま名前にしている種類がある。また文学的な名前、伝説によって名づけられた花の名、たとえば(フタリシズカ、オトギリソウ、ジョウロウホトトギス、アッモリソウ、ムラサキシ'千ブ、オミナェシ、テイカカズラ)の様な系統の名前も多い。また生植している土地の名を冠した名前も多い。(ヨシノユリ、オオシマユリ、キブネギク、タケシマユリ、チシマザクラ、エゾギク、ハコネウツギ、エイザンツッジ)の類。その他、人の名を冠して花の名としたもの、鳥獣魚の名をとってつけたもの、その花の生植している土地の生活風俗からそのまま考えついて、花の名につけているという場合もある。ことに百合のように日本の山野に自生する花は、その土地の伝説を名にしたもの、その花の形や色彩から名づけたものが多い。(テッポウユリ)あまみ大島の原産。江戸末期にオランダからはじめて、砲百合と名づけることになった。(タケシマユリ)朝鮮海峡の竹島原産の百合(ササユリ)さゆり(早百合)ともいう、笹の葉に似た山百合なのでササユリという。(クルマユリ)葉が輪生(くるまの輪)の様にまるくついているのでこの名がある。(ウバユリ)山百合の一種、花の咲くころ葉が枯れてしまうテッセン、ハナイカダ、スズラン)鉄砲が渡来したので、この白百合を鉄(ヒマワので(歯がだめになる)老女の姥にたとえて(タメトモユリ)太く隆々とした男性的な百合、源為朝の様に強いという意味(箱根百合、吉野百合ともいう)(カノコユリ)花弁が鹿の子のような染色がある。(ヒメユリ)姫君のように可憐にしてやさしい花。(クロユリ、オニュリ)花名の黒(実際は赤黒色)鬼の而のように赤い百合という意。以上のようにそれぞれの語源をもっているが、ユリという言葉は、草原に咲く百合が吹く風にゆり動くさまを象徴して「ユリの花」という名がつけられた、という伝説がある。百合は日本が原産で今日では枇界各国に分布している。6 R 花器・黄青磁水盤ハナショウブヒメユリ

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