テキスト1973
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この花器は木で作った花生である。古い日本の花器の中に木器のものがあるが、たとえば舟板で作った砂鉢、釣瓶の形、その他にも意匠的なものもあるが種類は少いし、趣味も古雅な感じのものに限られている。タイ国製のこの木器は、日本製の木器の低俗な趣味(舟板や木根を材料としたように)ではなく、タイ、インド風な建築調度からヒントを得たデザインではあるが、形としてなんとなくすっきりとした美しさをもっているのに感心する。さて、こんな容器に調和する花材はこまかい花や、細い枝もの葉ものは調和しないと思う。大輪の花、大きい葉ものが荒い必じの彫刻によくうつると思えるのである。写頁の盛花はテッボウユリの開花二輪、っぽみ一輪、アロカシアの大葉一本、これをのどかな謁子に活けたのだが、こんな花材こそ渦和するのでないかと考えられる。(配色もよいと思う)要は花器の形だけでなく、花器のもつ恙覚をくみとって、それに心の通じる花材を選ぶことが、花器を活かし花を引き立てることになる。花材費l横浜へ行くと私は元町の中ほどにある北山という趣味の店によることにしている。この店は印度、クイ方面の日用食器や戸制照明具その他、趣味の道具類を売る店である。写真の花器はこの店で最近買ったものだが、タイ国脱のチーク材で作ったサラダボール。チョコレート色の木肌が及しく形も仏陀の国らしい花材一、二00円l―つの感覚をもっている。盛花の花器に手頃の大きさなので花を活けてみるとしっくりと落ちついて花を引き立てる。炊事用品なので水も入るし、分あつい容器なので割れることもない。草花がよく涸和する花器である。彫刻に特徴のある花器である。(価格ー_九‘000円l)4 . ; I ァロカシアテッボウユリ(花器タイ国食器)

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