テキスト1973
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)ー日本の生活の中には自然を楽しむ心、自然の姿をとり入れようとする心、四季のうつり変わりを味わう季節感、そんなものが大変多い。木造建築、山水を象徴した庭園、石を配置した盆栽、その他、衣服の図案にも、料理や菜子の意匠にも常に木の実や木の葉、花の形をうつして意匠的な形をととのえる。竹を切りとって水を入れる容器とし、これに花を活ける考え方も、それと同じだし、竹、つる、むぎわら、草の茎まで、それを編んで花器を作り花を活ける。そして私達はそれを趣味として楽しみ、それを風雅として愛好する。竹器は水が入るという特徴を利用して、食器にも作り、花器をも作るようになったのだが、さらにそれに段々と意匠が加えられ、花器の場合には単純直線な竹の素材の切り方によって、多くの竹花器の様式を作り出した。ただ、竹器はあくまで素朴な竹の自然趣味を味わう花器であって、陶器の様に複雑な形や装飾を見る花器ではない。篭の花器も同じである。精巧な技法をほどこして作った篭花器も、出来上った作品からは風雅や野趣を感じるし、漁具や農具の形をうつして意匠づけられたものが多い。したがって、いけばなの花器としての竹と篭にはそれに調和する自然の情趣を味わうことのできるような化を活け、花器と花との調和を考えるのが習慣になっている。竹器や篭の花器のいけばなは、日本趣味の床の間や静かな感じの生活の花として飾りつけるのがふさわしい。決して派手な感じの花を入れる容器ではない。最近、ラッカーの塗料で装飾した篭様式の花器があるが、これは純粋な意味の篭花器ではない。のナdばな花器の一部分が垂れていて、鶴のくちばしの様な形なので「鶴くび」という切り方である。写真の竹器は新しい工夫で作った竹器なので、古い形のものとは違うのだが、技巧も美しく仕上げられてある。普通、こんな花器には小品の花を活けることになっているが、シマガヤの若葉の美しく新鮮な感じのもの2本、これに朱色のケジの花2本をとりあわせてひろやかな感じの投入れ花を作た。すがすがしい初夏の花といえる。⑧高さ25センチ程度の竹の花器。花器の中央にcこれも「鶴首」の花器だが、これは70センチ程度の背高い竹器である。普通、生花を活ける花器なのだが、これにシャクヤクの白と濃紅の花4本を投入れざしに入れた。簡単なつっこみざしの花だが、高く細い花器に左右にはり出したシャクヤクの形が、のびのびとして新鮮である。このような伝統の花器にも自由花が入るという、参考の作品である。この花器には大きい花も調和するし、また小さい花、たとえば椿一、二輪でも調和する。c 5 っ竹器tヽ

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