テキスト1973
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花ばさみは変わったものよりも普通のはさみがよい。稽古はじめの人がわからずに買って来て困るのはバネつきのはさみである。足もとに輪がついていて、く仕掛けのはさみ、あれが一番よくない。使う時に使いにくいし、輪がかかると今度ははずれにくい。少し時日が経つと中のバネがいたんであけしめがだめになる、そうなると全然使いものにならない。またキバサミといって、が、持つところが大きく二つの輪になっているはさみ、これは力が入らないから草花にはよいが太いものは切れない。切れ味のよいよく切れる鋏を使わないと美しい仕事は出来ないし、よい生花は作れない。太い木ものは鋸(のこぎり)を用意して荒切りをして細部をはさみで切る。太い木も細い葉も一丁のはさみで片附ける様なのはよくない。丁寧な手入れをするためには刃先の細く尖った手工はさみも用意する。葉のこんだ中、枝のこみ入ったところは普通のはさみが入らない所がある。その時に刃先の細い手工はさみをさし込む様にして切る。剪定鋏(せんていはさみ)といっはずすとバネではじこれは昔からある形だて園芸用の手ごつい鋏がある。太いものを切る時や、山野へ材料採集に行く時には大変重宝な鋏であるが、普通のいけばなには適当ではない。刃先が曲線に作ってあって、いけばなのこまかい仕事はこの鋏ではやりにくい。新しくいけばなを習う人は変わった形の花器や、変わった形の鋏を買いたがるがこれはよくない。よく先生に皿いてから買う様にしたc いものである。鋏は東京の洋鉄、兵庫一_一木の裁縫鋏、岐阜県測、大阪府堺、博多鋏などそれぞれ特徴のある鋏の産地だが、外国ではスウェーデン、ドイツの鋏が有名である。はさみを使ったあとは乾いた布で刃さきを拭いておくこと、ときどき油をつけるのがよい。新しくいけばなをはじめる人は、はさみを新調するようにしたい。お母さんやお姉さんの使った花はさみも結構だけれど、新しい気持で新詢のはさみを使う気持はいいものだし、新鮮な感じはいけばなの作品にも閲係をもつものである。使いにくいのは花屋の大型のはさみ、商売に使うはさみだから、花を活けるときの細部の技巧には向かない。いちばん幣いたのはブリキ屋の金屈戟断の大型はさみを持ってきたお嬢さんがある。こうなるとむしろ可愛らしい愛嬌があって面白い。山や野原へ採集に行くときは、はさみに赤い布ぎれをつけておく。緑の草むらに岡き忘れたり、落ちたりすると発見しにくい。あけしめのかたい鋏、さびついた鋏、反対にガタガタとゆるんだ鋏、こんな鋏を使う気持は花が上手に入らない、ということである。花ばさみ,

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