テキスト1973
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こでまりは庭園によく植えられているかんぼくである。四月中旬から五月にかけて咲き、白い小形の花がまるくかたまって咲き、てまりの様な形なのでこの名がある。おおでまりというのがあって、こでまりに比較すると花も大きく、あじさいの様に花がかたまって水色の花を咲かせる。いずれも庭に咲き、あるいは園芸栽培の花である。こでまりは中国に自生するといわれるが、日本ではほとんど園芸栽培らしい。私は戦後のある時期に野生の花をしらべるために山や野原や川辺など、数年にわたって歩き廻ったことがあった。五月のはじめに阪急宝塚線の清荒神の裏山を歩いたことがあったが、そのときみつけたのがコデマリだった。山の斜面にかなり集まって開花しており、園芸栽培でみるコデマリとは花も葉も変わっているので、コデマリの類種かと思って、とりあえず10本ばかり切りとって帰宅後、いろいろしらべて見、また活けて見たが、コデマリであることに誤りはなかったが、コデマリはこの地方に野生するものか、未だに疑問をもっている。ユキャナギもコデマリとよく似たかんぼくだが、これは京都の保津川上流や山間の川辺に野生する花で、いけばなの材料としてはコデマリ、ユキヤナギなどよく似た材料である。このごろ植物闊へ行くと、コデマリ、オオデマリ、これによく似たかんぼくのシジミバナのまっ白の閲花を見るのだが、新緑の樹問に植え込まれた白い花は初夏のすがすがしさを感じる花である。いけばなの材料としてのコデマリは大変調子のよい材料で、ことに瓶花に活けると引きたつ花である。褐色の細い木質の茎に若葉と白い花のかたまりが点々と連なり、垂れ枝の形がユキャナギと同様、格好のよい材料である。最近、コデマリを一種挿しの生花に活けたことがあった。コデマリやユキャナギは花と葉の軽やかな形と花の美しいものだが、季節が四月中旬から五月なので、かたい木質の枝から柔らかい若葉が芽だしており、その若葉をそのままにして活けると水揚が悪くしおれやすい。活けるとき若葉をとりさって花のしっかり固まった部分を見るようにして使うと、褐色の茎の枝線がはっきりとみえ、技巧の美しい花が入る。盛花瓶花も同じ考え方だが、生花にはことに注意することが必要である。格好のよい枝振りなので活けやすそうに見えるのだが、生花の一種挿しの場合には、コデマリの枝茎が硬ためがきかないので、案外、活けにくい材料である。.. く6 .... こでまりこれはスペインの花瓶である。白地の陶器に花の絵が描いてある。赤・紫・緑・黄みどりなどの色彩で描いた派手な花瓶だが,色が沈R (花瓶・スペイン)花・コデマリんでいるので落着いた感じにみられる。コデマリ一種を活けた。足もとをすかせて枝線をみせ,花瓶をはっきり見えるように活けた。

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