テキスト1973
6/149

一種で作る立花に、五一色「ごいっしき」というのがある。松、水仙かきつばた、菊、楓の五種の花をそれぞれ一種で立花を作るのだが、この五つにはまたそれぞれの個性があって、立花の中ではいちばん難しいといわれている。この写真は松一種の立花で、材料は五葉松を使って真から密に至るまで、すべて五葉松で作られている。松は種類が多く、季節によって松の葉色や、幹、枯枝、松笠など自然の変化あるものをあつめて立花に作る、というのが主意になっており、この作品のように五棠松一種というのはほとんど少い。富士の裾野の高原地帯で採集したというこの五業松は葉色も美しく、枝の調子も古さびて五葉松とは思えないほど枝振りがよい。葉組みせずに自然の枝葉をそのまま配置して、豪壮な感じに作りあげたが、立花の花形の中の「行中草」の形である。観世会館の梓の会に出品の専渓作品の―つだが、銀屏風を後にして群青の松の葉が浮き立つように新鮮な感じをみせていた。花「松一色」古銅の立花瓶に立調した松一色の立花。豪壮な感じの中に、悠然とした均衡をつくる。この花器にはどんな花が調和するでしょう。また、この花はどの花器によくうつるでしょう。この号は、そんな点について例題をあげてお話します。花器と花の調和ということは中々むずかしいものです。どの花にもよく調和する花器というのも、買うときに選択がむずかしいのです。盛花の花器は大体、形が統一していますから、瓶花の花器に較べると紐分やりやすいわけですが、それでも変化のあるものが多いですから貿うときによく考えて能率のよいどの花も活けやすい花塙を選びたいものです。花が人っていると花器の状態がわかりにくいですからこの号では活けた花と、その花器をならべてみて、特さんの参名にしたいと息います。水盤も高級なものからお桔古用の化器まで、いろいろ種類がありますが、ここではなるべく一般的なものを選んで使うことにしました。なお、その価格も害きそえておきます。花材の値段も害いておきますが、最近はお花が高くてともすれば、花器よりも化材の力が高いという場合があります。矛盾だと息いますが、よい花を活けようと息うとそんな場合がよくあります。10枚の作品写真ですが、花堺と化をよくみて、花器の性格と色調、趣味などを杓え、それに活けた花との淵和を考えて下さい。また、これまでのテキスト写真をふりかえってみて、その訓和を考えて下さい。桑原専炭流の個性は花沿を選ぶときも、明るくて上品な好みのものを使います。趣味のよくないもの、装飾のすぎたもの、奇をてらうもの、そんな系統のものはいけばなの品位を蕗します。値段の高い安いにかかわらず、本質的に花の品位を翡める花器を選びたいものです。2 盛花と花器立

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る