テキスト1973
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① ② 私の書庫に「生花百胚」という社戸時代の本がある。四冊合巻の若色筆写の書物だが、その中から特徴のある作品を三つ選んで掲載することにした。これは江戸末期の作品だが、そのころは技術的にも充分完成しており、むしろ額廃的な性格がいけばなの中にあらわれている、そんな時期なのだが、止統派の生花の他に、意匠的な趣向のある生花が多くみられる時代でもあった文楽、浮世絵など町人芸術の発展したころでもあり、庶民的な下町桔緒がいろいろな芸能となって流行した時代でもある。仕花の普通の作品のほかに、これに意匠を加えたような化花や花器、その他の装飾にも、今日からみると低徊趣味と思えるようなものが絵図を通してみられるのだが、俳旬の中から川柳がうまれたように、生花の栖脱な考案が反対に低俗になった、というようなものがみうけられる。面白い生花、変わった装飾といった考え方が、そのころの意匠作品の中に多いのだが、ここにあげた三つの作品は、そんな感じの代表的なものであって、その時代のいけばなの考え方の―つの部分であると思う。そんな意味で皆さんの参考のために掲載することにした。①花器が中々面白い。銅器か陶器かわかりにぐいが、ずいぶん凝った花器である。背の伝説では蛙の年経たものがガマということになっているが、その怪奇の親玉のようなガマが妖気を吹きあげて、その花器に白鳥木という五月の花木が活けられている。―R廿の花器には、舟、車、ツルペ、共仰といったように生活に付随した器具の類を花器にうつしてflる、といったものが見つけられる。また、鶴、亀、狛、鯉、かになど、鳥漱魚の形を花器や花留具に校写して竹ったものが多い。②の写真は、釣賄(つるべ)の花器を二段につみ、花合は井戸にかける釣瓶の車である。釣瓶のつみ力にも]夫があって、春の花木「れんぎょう、つばき」の二種が活けられている。花形のバランスがよく考えられている。つの幻想といった意匠花である。白愈太江戸時代の匠生花意J,れんぎょうつばきはくちょうほく

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