テキスト1973
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花器花材ギリシャ様式の花瓶ガーベラ・モンステラ河原町四条の鈴屋に入ってみた。近頃ひらいた店だけれど御婦人の服地からアクセサリーまでなんでもありますという店だが、商品棚のまん中に美しい花瓶が目についた。まっ白の陶器に黒色の絵つけをしたギリシャ風の花瓶である。もちろんイミテーションだけれど、白と黒の色彩がはっきりして、形もギリシャ瓶の代表的な手つき花瓶で、圏案もそのままに写してある。その夜、早述ながらこの花瓶に花を活けてみた。ガーベラとモンステラの二種である。ガーベラは淡い色のピンクとオレンジ色を五本、細いガーベラは花軸がくるくると動いてなかなか思うようにとまらないので足もとに細い竹ぐしをさしこんで形をととのえた。モンステラの濃い緑とガ,’_ベラの感じが、花瓶によく調和して、面白い味わいをみせている。ガーベラの花はかなり前方へ出ているので、写宵〈に奥行きをみせるために焦点を汲くして後方をぼかして撮影した。実際の作品も中々しゃれた慇じで、明るい調子の瓶花である。いつも思うのだが、新しい花瓶に花を活ける気持ちは、ちょうど新しい仕立おろしのきものを若るときのように、なんとなく新鮮な気持と心にときめきのようなものが感じられて活けた花さえも浮きうきとして、一層美しく思えるのである。初秋のはな九月毎月1回発行桑原専慶流編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専炭流家元1973年10月発行No. 124 いけばな

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