テキスト1972
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梓(あづさ)の木は、きささげともいう。10メーターにも高くのびる喬木で、秋のころ褐色の細長い実が枯れがれとして枝先につき、風雅に野趣の深い木である。写真の瓶花は梓に白椿をつけた作品だが、あづさの枝振りが変っていて、また実のつきようも面白く、この瓶花は普通の調子をはずした「奇趣」といったようなもち味の花である。江戸時代から明治期にかけて流行した「俳諧」はいかい、というものがあった。文学の長歌のような形式で、これはおどけた滑稽味をおびた俳旬の一種だが、これから狂歌というものが生れたといわれている。この俳諧の趣味を俳趣ととなえて、俳句発旬以外の奇なる趣の絵やその他の趣味にこの調子を用いるようになった。その時代の流行的世俗的な趣味ともいえるものであった。面白い変った味の花、しゃれた調子のいけばなは、この俳趣に通ずるところがある。「奇なるもち味のいけばな」というものが一部にあって、多くの傾阿のいけばなの中で、こんな感じの花を活けることもあるわけである。この写真の瓶花は調子が変わっている。右へ長くのびた細い枝先に長い実が数本揃ってついており、仝く面白い感じの瓶花である。こんなのが古い言葉の「俳趣」という趣味の花であろう。この俳諧趣味とか、またこれとは別の「粋」ーいきー,な好みという様なものは正統派ではないが、世俗的にはよく使われる―つの趣味である。俳趣のいけばな専渓毎月1回発行あづさ桑原専慶流No. 114 白椿編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1972年12月発行いけばな

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