テキスト1971
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いしようばな「意匠花」という呼び名がある。意匠的ないけばなという意味だが、生花、瓶花、盛花などのように分野のはつきりしたものではなく、特に意匠的に工夫した花、というのがその考え方となつている。意匠という言葉の意味は、形、色、模様などに美しい感じを出すための工夫、又は装飾的な考案ということになつているが、いけばなの場合は普通の作品の場合も、常に意匠的な考え方を一般的にもつているのだが、特に意匠花と名をつけて、作る人もはつきりとした定義はないけれど、それ、と考えることのできる形式や、作り方があるわけである。たとえば、ここに掲載した六つのいけばなは、照明具に花をあしらった装飾花ともいうべきもので、もちろん、照明具と切りはなしても小品花として見られるものだが、器具と花との調和、光と花の調和というところに、普通の瓶花や盛花とは少し達った考え方をみせている。また、解説の中でも書いたように、いけばな作品としては簡単であって、芸術的技術的な味わいが少ないけれど、照明具と調和させようとする点に、意匠的な考え方が多く使われており、これも一種の意匠花というべき性格をもったものといえる。意匠という言葉の範囲は広い。どんな工夫をしても、それが美術的な美しいものであればよく、装飾的な面白いアイデアのもとに、自由に作られた作品の中に、意匠という言葉の意味が含まれているのである。いけばなの中に意匠的な工夫を加えることは、桃山時代から江戸時代にもことに多かったし、これはたとえば正統文学に対する俳諧趣味といった様なものであり、一つの路線がありながらはつきりと、こんな方法や形式でやるものだという。そんな窮屈な尺度のないものといえる。とCn直くだけで出来上りである。。フラスチックのシェード、濃い紺色をしており不透明だが、笠の周囲にちりばめたガラス玉が二列に並んで、中からの光をうけて美しくかがやいている。これは卓上に置く可愛いらしい照明具である。これも横浜の三原でみつけたのだが、モダンなアイデアがあつて楽しい。灯光が下部へひろがるようになつているので、高い位置に置くと丁度よいのだが、今日はこれを机の上に置いてそれに調和する花を考えてみた。ガラス器のおつまみもの入れの容りがあって軽やかに美しい。これに花を活けることにしたのだが、この照明器具とガラス器のせんさいな感じを、花にも調和させるように考えて、ミニチュア・ローズの濃い紅色の花を短かく切って、花首だけを二輪ずつ、左右にわけて入れた。花留具の必要もない、ただそつまる<ひろがった光の中にバラの紅と緑の葉2枚、やさしくも美しい感じである。器具にはいろいろな形があり面白い意匠のものがある。それを使って花との調和を考える場合に、いけばなの方にもさまざまな工夫考案が必要であり、普通のいけばなにない新鮮なアイデアによって美しい花をつくりたいものである。器2個、これはふちに金色のくまど6 意匠花について.. `―-----ヒ

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