テキスト1971
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" ,..1·✓ 夜の花は照明のもとでみる関係から、昼間にみるほど引きたたない花がある。一般的にはいわれないが、紫色の花、黄色の花にそんな場合が多い。また、実つきもの、こまかい花の類、渋い感じの紅葉ものなど、その美しさや味わいがわかりにくい。例えば、オミナェシ、寒菊の紅葉、リンドウ、野菊、アカバンサス、ヒアシンスの紫など、紫系統のものがよくないが、様に、これは形の関係もあるが、紫花でも美しく感じられる材料もある。シオンの様に小花の集った花は引き立たない。照明のあかるさにもよるが、和室の床の間のように普通の場合は少しくらくみえる勘所には花の選び方に注意が必要である。これに反して、夜のいけばなに引き立つ花は、白色の花、ビンク色の花が最も美しくみえる。濃い赤色の花は大輪花であつても意外に引きたたない。夜の花、昼の花と区別することもできないが、花材を選ぷときの―つの考え方であろう。夜に引き立つ花は、テッボウユリ、バラの白色、クリーム、淡紅色。白色ハナショウプ、ササユリ、タメトモユリ、白花テッセン、ボタンの白と淡紅、ラッパスイセン、白スイセン、アジサイ、大輪菊、以上の花のように主として大輪咲きの花がよい。渋い感じのこまかい花はよくないということである。によっては、花の後方に光があっ渋い感じの花や掲色のて、花を逆光でみると美しいという場合もある。白花のハナショウブ、洋蘭の大輪花、ムクゲの花、カラジュームの葉、単弁のダリアの様に逆光を通して美しくみえる花葉もある。それを利用するのも面白い考え方といえる。花菖蒲やかきつばたの花である。昼の色と夜の電灯のもとでみるのとは格段の相迩のある代表的なものであろう。枕草子に「竜胆は枝ざしなどむつかしけれど、こと花どもみなか相枯れたるに、いと花やかなる色あいにてさし出でたる、いとおかし、とあるけれど、麻原の緑の草の中に咲くりんどうの花の色は、たしかに美しく色さえたる趣があるのだが、夜のいけばなには全く引きたたない花の―つである。してみよう。この照明具は最近、横浜の元町で買つてきたもののある。元町に三原商会という照明具の店がある。ふと通りかかつて立ち寄ったのだが、この店は一般の電機器具屋とは辿つて、美術的な照明具を選択して店内にならべてある。一っ―つ芸術的な味いのあるものがあまた―つの考え方として、照明具りんどうの花も夜には引立たないさて、掲載した写真についてお話つて中々楽しい。また客の好みをきいて一品ずつ作るというまことに珍らしい店である。東京のお茶の水に御婦人用のスリッパの専門店があって、美しい色と図案のスリッ。ハが沢山ならんでいる一っでのに感心したが、この三原の商売のし振りも中々よい。60ワットの吉色の電球を入れて、その横にオレンヂ色のガラス器にカラーの白花2本、葉2枚を軽い感じに挿した。いけばなに重点を置くのではなく、照明具と花との調和という点に注意されており、調和の美しさを考えたものといえる。花はもちろん巧く活けねばならないけれど、同時に花を飾る、その装飾の仕方について考える事も大切な事である。3

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