テキスト1971
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R古い九谷焼の染附磁器、高杯(たかつき)水盤である。白地にトウモロコシの絵が藍色で描かれてある。檬に虫の図が三つ描かれており、盛夏用の花器である。藍絵の花瓶は夏季に使うことが多いので、図案もその季節にふさわしい囮柄を選んで書いたものが多い。古い花器ほど夏の器物という形式をとつている。非常に巧みな絵で名エの作品だと思うが、作者がはつきりしない。こんな花器は絵を見ることが大切だから、花を活ける場合もそれを考えて、一方の隅に花を入れて絵のよく見えるように考えることである。花を活けるよりも果もの盛りとして使うのが適当かと思う。写真は紅色のシャクヤク3本、たっぷりとした緑の葉がみずみずしい。R R R京都の五条坂で買った煎茶碗、かなり大ぶりのもので、花器にも使えそうなので小品の花を入れることにした。写真では大きく写つているが小さい花である。キキョウ一本、それにつぽみを添えて、ナルコユリ一本、すそもとへ軸についた別の葉を一本そえて足もとの形を作った。小品ながら引きしまりのある花形となつている。時としてこんな着想も面白いものである。活けあげてみると茶碗に見えないところが面白いし趣味的である。小さい剣山を使つて留めてある。以上、巻頭のを入れて七点の「藍絵の花瓶の花」を活けたが、図案と花との調和を考えて活けると、まことに楽しい思いがする。また、その中に花の選択や活け方にも注意することが多い。最近の陶芸家の中には絵の巧い人も多い。そんな陶画の花器を使ってのいけばなの研究というのも、一っの分野といえるだろう。ナ)レコユリキキョウ(煎茶碗)しゃくやく(器古九谷)水入れの器具をつかう10

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