テキスト1971
83/154

c八月に朱色に色づく「ほおづき」である。いけばなの材料としてはあまり使わないものだが、俳趣とでもいうのか風雅な味わいのある材料である。坦庭で作ったのを活けたのだが、なんとなく変った味わいがあつて面白い。八月になると実を包む袋が朱色に色づくが、その緑色の頃に活けると雅趣もあり水揚もよい。朱色のころとなると葉もだらりとして水揚が悪くなる。楓も五月六月の緑の葉のころは水揚もよく青楓の情姥が好ましいが、十一月紅葉の季節になると水揚も悪くなる。色づくということはその花木の最終の華やかさを飾る季節で、老衰への最後の季節でもあるから水揚も(吸水カ)も悪いわけである。この絵は黒色の漆器に緑の業、少し黄ばんだ実の「ほおづき」を1本、れにアカバンサスの古色の花を2本そえて立体の瓶花とした。花器のすつきりとした黒色に新鮮な緑と、青色の花の配合は新しい夏のすがすがしさを、象徴するような清新さをもつていると思う。花屋にはない材料で手作りの庭の材料であるから新鮮で水揚もよい。足もとを熱楊で3分間ほど煮き(アルコールを小姑湯の中へ加える)その後、冷水にうつす。c か!‘万1‘人~ぷ一人印J孔こヽ⑪白雲木(ハクウンボク)とかきつばたの瓶花である。花器は六角型の漆器に入れた。五月中旬の花である。ハクウンボクというのは庭園樹で、高さ15メーターにも及ぶ落葉喬木で、桐の葉に似た広い葉をつけて、白い花が房状につき、群つて咲く状態が白い雲の様に美しい、というところから「白雲木」と名づけられたのであろう。引月の初夏の温度に、少し水揚のよくない材料であるが、足もとを焼く程度で水揚げる、そんなにむづかしい材料ではない。五月に入って初夏らしい季節になり、この白雲木のような花をみるようになると季節のうつり変りを感じるようになる。茶席の花にもよく使われるしずかな感じの花で、すがすがしい万月を象徴するような花である。日本趣味の上品な花であるから、かきつばた、姫百合などと配合すると調和のよい瓶花となる。この図のかきつばたの足もとが技巧的に美しい。5 よ礼太人り⑬

元のページ  ../index.html#83

このブックを見る