テキスト1971
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グラジオラスは南アフリカの原産の花といわれるが、日本では明治時代から盛んに栽培されて、唐菖蒲又はオランダ菖蒲などと呼ばれて、いけばな材料として使われてきた花である。花壇に栽培されているのをみると、形も色もよく調和した美しさをもつているが、さて切り花となつて手にとつてみると、あまりにも手強い感じで普通には活けにくい材料といえる。く活けるのにはどうしたらよいかと、しきりに考えるのだが、結局は大輪咲きの強い色の花が段々とならんで、変化に乏しい、というところが問題なのであるから、思い切つて尖端を切りとつて活けてみようと考えて、活けたのがこの盛花である。が、濃紅の花の満開の部分をのこグラジオラスをいちばん格好よ白黒写真ではわかりにくいのだして頭を切りとり、それを三本、前部と後部にわけて挿した。ムギの緑の穂と葉、これを前部と中間に挿して、グラジオラスの赤の前に重ねるようにして、かなり強い色調の瓶花を作った。花器は黒青色の広口花瓶で、色彩と形とがさっぱりとした夏の感覚をあらわした花といえるだろう。

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