テキスト1971
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/ 桑原専渓永年わが国の教育、学術、文化の向上のために尽力し、多大の功績をあげたという趣旨によって、四月二十九日、勲五等に叙せられ、瑞宝章を賜わることになりました。万月十二H正午、東京国立大劇場において伝達式が行なわれ、式後、皇居において賜謁の栄をたまわることになつております。まことに専渓個人の似びでありますとともに、これは流儀の皆で、流儀の名誉として御同殿いただきたさまの御支援によるところと存じますのいのでございます。かえりみますと、私が花道をはじめて五十年になります。十八オの若年のころ先代が急逝され、そのころ学生生活をやつていました私も、すぐ家元を継ぐとい叙勲う自信もなく、とにかく「家元内桑原宗艇」という花号で、花道界にのり出し、かたわら技術の鍛練と桑原専慶流の勉強に、一生けんめいの努力をしました。それに報われて、10年後には諸流の花道家の中で、花展の場合にも審査員におされるようになりました。二十年の努力を重ねて、漸やく自信がつきましたので、三十八オの秋、流内の師範門弟の切実なご推挙によって、家元襲名の式を挙げました。ちょうど束山弥栄会館が新築落成し、その第一回の催しとして「家元継承披露桑原専巖流展」を開催し、それを機会として十三世家元を製名した次第であります。随分、永い道でありましたが、今日、思いがけない叙動を賜わり、只々恐縮している次第です。幸に健康でありますので、いよいよ努力して御期待にそいたい信念でございます。この上ともよろしくお顧いいたします。(専渓5月10日記)ぽたんは昔から高貴の花といわれ、いけばなにも品位を充分考えて活ける花とされております。五月のはじめがその季節でありますが、晩秋の十一月に返り花が咲き「寒牡丹」といつて、生花では春の牡丹と晩秋の牡丹との活け方が違います。材料そのものも姿が違いますし、春の牡丹は輩かな感じ、秋の牡丹は寂蓼の感じを出すように活けます。春の牡丹は花の美しさを賞美するとともに、豊かな葉を適当にさばいて、上方は少し小型に、下部はたっぷりとふくらみのある形に活けると個性がよく感じられるのです。写真の生花は五月三日に活けたものですが、幹つきのものを上方に1本(つぽみ一輪)、下部には若い茎に大輪の花のあるものを一輪、上を小さく下をどつしりという花形に作つてあります。真の茎のみえているところ、胴から留への葉の使い方などがむづかしいところですが、この花器は立花の花瓶(古銅)で中筒はなく、実に活けにくかったのですが、活け上げてから、あまりよい花でないな、と思いましたが、締切りの日が迫つており、とりあえず参考作品として掲載しました。牡丹の生花章等ヽ瑞勲宝五5月2日師範認証式にて

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