テキスト1971
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Rカキツバタ、イチハッ、アヤメ、ハナショウプはアヤメ科に屈する花だが、その中でもハナショウプは、花の品種がことに多い。原種は紫色らしいが、これから園芸の技術で交配変種が多く栽培されて、ハナショウプは花の種類の多いものと、一般的に考えられるようになつている。「和漢三才図会」に「紫色を正とする。近頃浅紅のもの、白色のものを出すも、みなこれ変種なり」と記されている。和漢三才図会は江戸中記の寺島良安の著作で、和漢古今にわたる種々の事物を天文、地理、動植物、人物、器具などにわけ図を挙げて漢文で解釈した書物である。ハナショウブは四月下旬より六月にわたつて、水辺に咲き野生のものは山地の沼沢に自生するものがある。カキツバタの花は葉を少しぬいて低く咲くが、ハナショウブは葉よりも高くのびて咲き、いけばなにもこの性格をあらわす様に活けることになつている。Rは紫ショウプに紅あざみの瓶花だが、五月の花として清爽の季節感の深い花といえる。すがすがしい初夏の情趣を感じる花である。六月の瓶花ある。水揚のよい花だが、新しい花でもRテッセンは中国原産の花で、鉄線または鉄線花と書く。蔓性の植物で濃い紫色と白色の二種があり、五月に六つの花弁の花がひらいて、初夏の花らしい清楚な感じの花である。「窓ひらく鉄線の花咲きわたり」という青祁の句にあるように、初夏の風を誘うような明るさをもつ花で活けた翌日あたり、思いがけなく萎れることがあり、根もとを焼いて深い水に入れておくとすぐ水板げて、その後は数日間にわたつて花の散り落ちるまで日持ちのよい花である。写真Rは一aTッセンの紫と紅あざみの二種を白磁の花瓶に挿した。これも清爽な感じの深い瓶花といえる。色彩の美しい花である。R 8 ,,■ ' . . ⑧ テッセンアザミアザミR R ハナショウブ

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