テキスト1971
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この月のテキストには「小品のいけばな」を活ける予定でとりかかつたのだが、さて、出来上った写真をながめてみると、小品というのには少し力が入っているし、小品的な感じが乏しいように思われるのである。普通の作品とは少し小型の花、というのが適当だと思う。折角活けるのだから、いい作品をと思う心が、当初の目的の小品からはみ出したのだろう。制作品のうち大きいものは大作、小さいものは小品というのが一般的だが、その中間のものは中品という理窟だが、中品という言葉は使わない。小品というのは小さい作品という意味の、ただかさが小さいとか、表面的な小型の作品というだけではなく、小品は小品としての特殊な味わい、気のきいたびりっとした味わい、省略された中に深い感じのある花、そんなのが小品のもち味でありそのよさである。R Rふくべの花器に白椿2輪、ひつそりとした小品の花である。さびた黒うるしの窓に、緑の菜、椿の白花が上品な落着きをみせている。中筒の中に剣山を入れて留めてあるのだが、かさ低く入れて花器に枝葉のふれないように、また花器の内部がゆったりと見えるように活ける。花器によく安定するように大きさをきめることが大切である。ぼたん一種、ささ百合、菊などのように大輪の花がよく調和する,R自然咲きの木瓜(ほけ)の枝にラッ。ハ水仙の淡黄、白椿の3種瓶花である。花器は朱色の陶器で、色彩的には美しい配合である。小型の花だが、小型と見えないほどよくととのつた瓶花である。木瓜は白色の花、緑の小葉か残っている。三尺床程度(六帖の間)の部屋に調和するいけばなである。新年から三月頃までの花材である。ロの広い花器にはこの作品のように花器の一方をあけると形がよい。2 (11代富春軒専慶作ふくべの花入れ)小品的ないけばなR

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