テキスト1971
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山桜(やまざくら)は桜の原種ともいわれるもので、四月十日ごろ掲色の新芽が出て白い桜花が咲く。京都の嵐山、奈良の吉野山はやまざくらの名所である。全国的にいちばん多い「染井吉野」は江戸時代に、東京染井の植木屋が伊豆地方にあったこの桜を持ち帰り栽培したもので、これが全国的にひろがったもの、といわれる。吉野山とは関係がなく、江戸彼岸桜と大島桜の交配種ということである。写真の瓶花は、やまざくら、アカシャの一一種を配合して活けた。白と黄色の満開の花が黒い花器によく調和して、はつきりした色感をみせている。桜には椿、かきつばた、などの様に自然趣味の素朴な感じの材料がよい。この写真の瓶花も桜とアカシャの株もとをすかせて、花が混雑しない様に注意した特殊な花型を作った。瓶花の分体花型といつてもよい形である。単純な形と色彩の調和といったところにねらいがある。京都の桜は神社寺院の建造物を背景にみる桜が多く、それだけに雅致に富み、絵画的な情紹を一庖深く感じる。御室仁和寺のさとざくら、嵐山の山ざくら、円山、平安神宮のしだれざくら、大原の北山桜、鴨川堤、北白川の染井吉野、その他かず限りなく桜の名所がある。染井吉野は全国的に多いさくらだが品格にとぼしく、しだれ桜は糸桜ともいわれ、花も美しく上品である。京都御所の北苑に紅しだれの花が咲く。静かな環境の美しい桜である。2 京都のさくらR 京都平安神宮のさくら瓶花やまざくらアカシア

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