テキスト1971
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(放送原稿)花を飾る、ということは、世界中のほとんどの国で行なわれていることでありますが、今日は「ヨーロッパの花、日本の花」という題で、思いつくままのお話をしてみたいと思います。一般的に花といつても、それが庭園の花の場合もありますし、鉢紐えヨーロッパの花日本の花ラジオNHK全国3月26日朝と夜桑原専渓の花もあり、また切り花として、いけばなにする場合もあります。また外国の習慣として、日本のいけばなとは少し辿った花の飾り方、たとえば、テーブルデコレーションの花、結婚式や贈りものに使う花たば、御婦人のアクセサリーとして、頭の髪かざりや、胸かざりの花などがありますし、コサージやブーケーの形式にもいろいろな種類があつて、中々意匠的、美術的なものが多いわけであります。最近、外国風の花の使い方が、日本の生活の中にもとり入れられて、結婚式の花束や、テープルデコレーションの花、コサージの花などを使うことが一般的になつているのは、皆さんご承知の通りであります。ヨーロッパで花の多い国は、イギリス、オランダ、フランス、ドイツなどでありますが、イギリスには木に咲く花が多く、オランダ、フランス、ドイツなどでは草花の栽培が盛んであります。スイスの高山植物の花、スペインのオレンヂなどが有名でありますが、これは当然、その国々の温度と平野地方と山岳地方などの差によってわかれることになります。国を象徴する花というのがあります。例をあげますと、日本の国の花はサクラ、中国の花はボタン、インドはケシ、というように、これをョーロッパで考えてみますと、イギリスの国花はバラ、スコットランドはアザミ、これはいずれも動章の図案に使われています。ドイツの矢車草は、かつてのカイゼルの愛した花でこれが国花とされています。イタリアのデージリリー、スイスのシャクナゲ、オランダのチュー,リッ。フ、それぞれの花を考えてみると、その土地に咲く花と国民性があらわれています。山と湖の国であるスイスは、アル。フス山脈の古臼地のことでありますから、高山植物の類、例えばウスユキソウ、チャボリンドウ、ミヤマヒナゲシなどの野性の花が多く、シャクナゲの花に似たアルベンローズはアルプスやビレネー山脈に多くみられる花でありまして、以上のアルベンローズ、チャボリンドウ、ウスユキソウをアル。フスの三つの代表的な花に推薦して、美しい絵葉書にして現地で売つています。チューリップの原産地は小アジアといわれておりますが、これがトルコに入り、その後、オランダでひろく栽培されるようになり、現在はチューリッ。フというとオランダを連想されるようになつています。オランダやベルギーは草花の園芸栽培の盛んな国でありまして、球根の輸出では世界的に最も有名であります。ダリア、ヒヤシンス、バラ、シャクヤク、ツバキ、シクラメン、ペコニア、フランスのマドンナの様な花が盛んに栽培されていますが、シャクナゲはオーストリア、オランダがよく、バラはイギリスよりもドイツ、フランスの方が盛んであります。イギリスは、プーゲンベリア、エリカ、レンギョウ、モクレン、バラ、ユキャナギの様に木に花の咲く植物が多く、草花ではダリアの栽培が大変盛んでありますが、ロンドンのキュー植物園では二00種以上の変り咲きのダリアが咲きますし、毎年、ダリアのフラワーコンテストが行なわれております。円本からアメリカ、ヨーロッパに輸出されまして、現在は原産地の日本以上に美しい花を咲かせているのは、ツバキとッッジであります。ツバキは戦前の日本では、匝十種程度といわれておりましたが、現在では七百種程度まで、園芸的に変つた花が栽培されておりますが、欧米のツバキは、更にそれ以上の多くの品種の花がつくられております。日本の北陸地方に咲きます雪椿という野性の椿も、ヨーロッパの北部地方で栽培される様になったということであります。ッッジの方も「アザレア」という洋名で、大輪咲きの美しい花の鉢植えを見ますが、これも日本種のツツジを、あちらの園芸の技術で、大輪の花を咲かせるようにして、逆輸入しているという状態であります。ヨーロッパの家庭のいけばなは、外国様式の盛花(掲載写真は3月15日に活けた作品です)10 R

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