テキスト1971
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c掲色の花瓶に淡紅の桃、白椿の二種の瓶花である。この桃はよほど形のよい桃である。曲った小枝があるので活けやすい。上の方へ商くのびた枝、花諮の口から下へさがつて曲のある枝、単調な中に変化がある。下の枝をかなり前方へ出して細い枝を少しためて曲を作った。白椿を前へ低く入れ、また後万へは高く奥の方ヘ一枝、椿の入れ方も配叩いが面白いと息う。花器の口が狭いので入れにくかったが、出来上つてみると下張りの花瓶の形によく安定してよい格好になつている。四月ごろに目然に咲く桃は変化のある枝もあるから活けやすくなる。⑪この花器はタイ国製のチーク材の木の鉢。サラダボールを花器に使った。口径40センチもあるかなり大きい器である。掲色の光沢のある木地が美しく精巧に出来上つている。中筒に小製の水盤を入れて花を挿した。淡紅の桃と白椿、それにクンシランの葉を三枚、前方へ入れて、uo則向きに三枚ならべて、少し前へ傾少し感じの違った取合せにした。桃と白椿は調和のよい材料で、この二種で充分だが、変化のある調チを出すために広いクンシランの葉をけて挿したのだが、これで、この盛花にも異色を加えたことになる。桃のいけばなには直線ののびた枝、これを加えないとその感じが出ない。曲った枝だけでは桃らしくみえない。c 桃は二月から四月までの花材だが、枝振りが匝立した形で、普通に考えて形のよいものが少ない。直立した形が他の花木と迩った面白さがあるのだが、瓶花にも盛花にも変化のある花形が作りにくいものである。ぬうとのびた調子が桃の個性であり、その個性の而白さを形よく活けるのが中々むづかしい。'桃の中に肝桃(からもも)というのがあり、これは枝振りに変化もあり、花も沢山ついたものが多いが、俗っぽい感じのもので雅趣に乏しい。―一月末から三月に入ると温室の桃の中に、変化のある形のものが出てくる。この。ヘージの桃の材料はかなり変化のある枝振りで、この程度だと快いやすい。多く入れるよりも数少<淮純な感じに入れるのが個性をつかみやすい。したがつて桃の瓶花盛花でよい花形だなと感じられるのは、活ける人の技巧と考え方がよほど優れている楊合、といえる。t ー⑪

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