テキスト1971
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鴫4溢専漢井戸というのは用水を得るために地下を掘つて地下水を汲み上げる、あるいは吸水ボン。フで汲み上げる方法などですが、その地上の部分のワク組を木、石などで作ったのが「井筒」というわけです。呆というのは、地下から自然に湧き出している水で、豊かな地下水があふれ出て清らかな水が、いつつきるともなく流れている、そんなのが泉といわれております。山から地下を通つて町の中まで、豊かな水があふれ出ているという状景は、ほとんど少くなったようですが、賄分以前若狭の小浜の一番町というところにこの流儀のいけばなを教えている山崎慶秀というお宅を訪問したことがありましたが、台所のわく組みの井筒から清らかな水が、音を立てて湧き出し流れているのを見ましたがこれが「泉」というのでしよう。ロほど離れた山地からの地下水だと思いますが、最近はほとんどこんな状景は見ることがありません。このごろの都会では「泉」どころか、井戸の水も枯れてしまつて、井戸の形が残っていても水は出ないというのが一般的な状態です。それでも京都には「名井」「名泉」といわれているものがかなり多く残存されていまして、現在豊かな水をたたえているところもあります。いけばなには自然の水、井戸の水がよいことは当然なのですが、今日では一般的には望むべくもありませんし、すべては「水道」の水を使って花器に入れるのが常識となつています。京都には歴史的に由緒のある2キ井戸、泉が保存されていますが、その中から私の乏しい記憶をたどつてそのいくつかを書いてみようと思います。12月にその数力所を写真にとりましたのでそれを掲載して、話題をひろげてみようと思います。京都市に残存している名井とあわせて井戸水といけばなの水、その他の用途に使う自然水のよさという点にも考えてみたいと思うのです。このテキストをお読みになつておられる皆さんの家庭にも、まだ、豊かな井戸水のある地方の方もあることと思います。ご参考のためにお読み下さい。現在、京都、大阪などの民家で井戸水が湧出して、そのまま釣瓶.. (つるべ)で汲み上げている家はほとんどないと思います。地下に深く鉄管を掘り込んでモーターで吸い上げるものはありますが、それさえも珍らしい状態です。大建築の地下室や地下鉄によって水脈を断絶されて井戸水が枯れてしまったというのが大部分です。先日来、京都の名井について古書や伝説にもとづいて、訪問したものを記録してみましよう。祐井(さちのい)染井(そめい)染殿井(そめどのい)雲水の井(くもみづのい)左女牛井(さめがい)小町化粧の井戸(山科随身院)鉄輪の井戸(かなわのいど)野中の清水(のなかのしみず)走井(はしりい)このごろの都会生活では,井戸の水というものがほとんど昔語りと思えるほど,なつかしい思い出となつている。井戸と泉,自然に湧く水といけばなの水,そんな点にも考えてみよう。左女牛井の跡さめがい小野小町化粧の井戸(京都山科)(京都掘川)井戸といずみ,-y

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