テキスト1971
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をつけましたが、白と黒との色の対照を考えたのです。全体、美しく手ぎわのよい仕事は作品を弱くしますから、ざらっとした感じになるべく小細工をしないように、多少きたない所があってもわざと手を入れないように注意しました。丁寧にするほど作品を弱くし、小さい慇じになってくるものです。最後に上部の後方に「まき」の実の大きいものを10本ばかり、ほとんどかくれる様に奥深く添加したのですが、色彩を加えるという意味もあるし、花瓶というイメージに調和する考え方も含まれています。こんな考え方が「花道家の造形」ということになるのだ、と思います。それ以外の小細工は一切やめて、単純明快ではつきりとした作意をまつすぐにあらわそうと考えたのです。後方は浪い令色のバックで、色彩効果もよかったと息つています。作家にはそれぞれの考え方があります。これが個性というものです。いつも土や石を材料に使う私のやり方も―つの個性となつています。そして私の造形の中に明るいモダンアートを作りたい、と考えているのです。以上のような考え方で、この作品を作りました。白と黒(緑を交えて)の単純な色調のこの作品は、明るい感覚をもつていると息います。私の造形は一作ごとに私なりにこれまでにない新しい形を作ってきましたが、それでも作品を通じて「私」という個性がはつきりと出ていると思います。創作造形というものは、その言葉の示すように、常に創作であることが必要です。新しいものへ、新しいものへとつき進んで行く熱伯が必要なのです。自分の心への戦いでもあるわけです。そしてでき上った作品は、技術的にも立派であることを希うわけです。こんなに考え努力して作った作品をどこに飾るのか、どうなるのか① ③ という問題がありますが、それは花展の出品作として作るという第一目標とともに、さらにこれを洋風建築の広間の装飾としてかざるのも適当だと考えられますし、洋風庭國の芝生の上に附くのも調和がよいと考えられます。いけばなが家庭の装飾物④白②模型の10倍大の骨組みを作るセメントで仕上げるというこれまでの出位が、すでに変つてきていますから、花道家が造形美術家であるなれば、植物の系材からはなれて、こんな方面に進んで行くことも一っの行き方である、と思うのです。ラス綱をはり形を作る構想を描<'それによって油土で実際の形の校型を作る11

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